【新聞ウォッチ】ホンダ N-BOX 快走の影で…過労自殺の販社店長、労災と認定

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気になるニュース・気になる内幕---今日の朝刊(朝日、読売、毎日、産経、東京、日経の各紙・東京本社発行最終版)から注目の自動車関連記事をピックアップし、その内幕を分析するマスコミパトロール。

2017年12月20日付

●リニア談合、4社調整11年合意か、直線ルート決定直前(読売・1面)

●のぞみ亀裂14センチ破断寸前、台車枠、JR西「脱線の可能性」(読売・1面)

●スバル80年代から不正化、無資格検査報告書、追加リコール検討(読売・2面)

●三菱マテ改ざん拡大、子会社3社、ワイヤ製品でも出荷310社に(読売・6面)

●日産車体が赤字転落、来年3月期予想(読売・6面)

●ルール軽視の社風、スバル報告書検査員試験も不正(読売・9面)

●EVモーター協業拡大も、日本電産、仏車大手に加え(朝日・6面)

●残業肩代わり過労自殺、車販売店長、労災と認定(朝日・38面)

●日立、1万2000台不適合、エレベーター「安全に問題なし」(毎日・6面)

●日本株買い始めた日本人、11月、4年ぶり高水準(日経・1面)

●スバル12月受注3割減、無資格検査、国に報告(日経・3面)

●タイでEVシェア開始、トヨタ、まず大学構内で10台(日経・11面)

●曙ブレーキ全株売却、独ボッシュが保有の12%(日経・13面)

●豊田織機、EV電池参入、トヨタ・パナソニック連合に合流へ(日経・14面)

ひとくちコメント

新車の完成車検査で、無資格の従業員が業務に携わっていたSUBARU(スバル)。東京・恵比寿の本社で記者会見した吉永泰之社長は「多大なご迷惑をおかけして、心よりおわび申し上げます」と、改めて深々と頭を下げて謝罪した。

記者会見では30人近い弁護士が、434人ものスバルの役員を含めた社員にヒヤリングした「完成検査の実態に関する報告書」を53ページにまとめて配布。完成検査業務の公益性・重要性に対する「自覚の乏しさ」や現場における「過度な技量重視の風土」など、長年にわたり不適切な検査が行われていた実態を明らかにした。

記者からの質疑応答も含め1時間50分に及んだ会見で吉永社長は、前例踏襲主義など時代に即応しなくなった企業体質に情けなく思ったからか、言葉を詰まらせながら沈痛な表情を浮かべる場面も多くみられた。中でも印象深かったのはスバルの今の社風を「昭和の会社」という言葉で表現。「昭和にはいい面もあるが、近代的なアカデミックの会社にしていかなければならない」と決意を新たにした。

平成の時代もあと1年余りで終わり、昭和が一段と遠くなるが、昭和の高度成長期に企業の現場でよく使われたのが「モーレツ(猛烈)」とか「ノルマ主義」という、今の「働き方改革」に逆行するような言葉だった。スバルの無資格検査は、生産現場の問題だが、ところが、自動車の販売会社では、今でも昭和の会社の香りが漂う職場も少なくないようだ。

ホンダの子会社「ホンダカーズ千葉」の販売店の男性店長が2016年12月に自殺したのは、長時間労働などによるうつ病が原因として、千葉労働基準監督署が労災認定していたことがわかったという。

きょうの各紙が社会面で「ホンダ販社で労災、部下に代わり持ち帰り残業」(日経)などと取り上げている。それによると、男性は2015年3月、千葉市内にオープンしたホンダの販売店の店長になったが、部下の残業を減らすために代わりに残業するなど長時間労働を続けたという。6月に行方がわからなくなり、2カ月後に戻ったが、ストレス性うつ状態と診断された。その後、無断欠勤などを理由に書面で懲戒解雇を通知され、1年前の12月20日に自殺したという。

千葉労基署では、店のオープンの準備期間が短く焦りや不安を生んだことや時間外労働が80時間を超える月が2回もあったこと。13日連続や17日連続の勤務をしていた。さらに、3カ月連続の赤字でノルマを達成できなかったなどが原因でうつ病を発症したと判断し、労災と認めたそうだ。

ホンダは国内の新車市場で軽自動車の『N-BOX』が快走を続けているが、販売の最前線では「昭和の会社」の企業体質がそのまま残っているようでもある。

《福田俊之》

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