富士通テンからデンソーテンへ…自動運転実現の一端を担うデンソーテンのポテンシャルとは?!

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デンソーテンブース(東京モーターショー2017)
  • デンソーテンブース(東京モーターショー2017)
  • デンソーテン「リモートマルチアングルビジョン」
  • デンソーテン「前側方ミリ波レーダー」
  • デンソーテン「安全運転のためのテレマティクスサービス」
  • デンソーテン「AIを活用したタクシー配車システム」
  • デンソーテン「車載用超指向性スピーカー」
  • デンソーテン「リモートマルチアングルビジョン」
  • デンソーテン「リモートマルチアングルビジョン」

市販カーAVブランド「ECLIPSE(イクリプス)」で知られる、富士通テン株式会社は11月1日の資本構成変更により、社名を株式会社デンソーテンとして新たにスタートした。同社はこれまで、カーナビ、ドライブレコーダー、クラウド型タクシー配車システムや、クラウドと連携する業務用ドライブレコーダーといったソリューションも開発してきた。また、前方のクルマに一定の距離でついていく車間自動制御システムや、衝突を予測して警報やブレーキを自動でコントロールする衝突時被害低減システムに応用されるミリ波レーダー、さらには、車両の全周囲を様々な視点から“立体的”な俯瞰映像で確認できるマルチアングルビジョン TM等のセンシング技術も開発してきた。

新社名での同社の今後の活躍は? 自動運転に必要な電子デバイスを開発するデンソーテンのポテンシャルについて調査すべく、先日開催された「東京モーターショー2017」の同社ブースで、先進技術をこの目で確認してきた。

そこでは、クルマの周囲を見る・捉える「センシング技術」、車両情報や天候情報などのビッグデータを活用し新たなサービスを提供する「情報分析ソリューション」、ドライブ状況に応じた車室空間を演出する「先進HMI」など、自動運転実現の一端を担う先進技術の数々が紹介されていた。

今回の東京モーターショー2017の同社ブースでは、「ICTで人とクルマをもっと近くに。」をテーマに、上記のような先進技術の“現在形”および“未来形”が展示されていた。「デンソーテン」の真髄が紹介されていた、というわけなのだ。

当記事では、これら、一歩先を走る同社だからこそ提案できた実用性の高いICT技術の数々を、技術者へのインタビューを交えながら、1つ1つじっくりと解説していく。

進化したセンシング技術により、車両を見守る


まずは、「リモートマルチアングルビジョン(以下リモートMAVと表記)」から紹介していこう。これは、4カ所のカメラを活用して車両周囲を360度の立体的俯瞰映像で表示するという技術、『マルチアングルビジョン(MAV)』の進化形だ。『MAV』が製品として発表されたのは2010年で、当技術は主にトヨタ自動車の主要車種に『パノラミックビューモニター』の製品名でグレード標準やメーカー純正オプション等として搭載されている(2015年1月からは、ドライバーの視点からボディを透過したような見え方で死角を確認できる新機能が『シースルービュー』の名称で、新型アルファード/ヴェルファイアにメーカーオプション設定されている)。

さて「リモートMAV」の特長とは、開発を担当したVICT技術本部 第四技術部 製品企画チームリーダの石尾雅人氏にお話を伺った。

「リモートMAV」の最大の特長は、従来のユニットに通信モジュールを組み合わせており、これによってリアルタイムに車両周辺の映像を車両から離れた場所でもスマートフォンなどを介して見ることができることだ。

展示では、隣に駐車していたクルマにドアをぶつけられ、その通知がスマートフォンに届くという設定でデモが行われていた。デモ車の「リモートMAV」にはなんと、通信ユニットのほか衝撃感知ユニットも搭載されていて、常に作動していた。そして隣のクルマがドアをぶつけたり、外部から何らかの振動(盗難など)が加えられると衝撃感知センサーがそれを検知し、通信ユニットとカメラを作動させる、という仕組みとなっていた。スマホ側にはまず「WARNING」が表示され、さらに画面上のボタンを押すとカメラの映像を見ることができる。画面上を指でドラッグすることで、車両周辺を好きな角度で見られるのも使いやすい点だ。

なお当システムは、何も起きていない状態でも自分のクルマのことが気になる場合には、スマホ側からリモートMAVを作動させることで周辺を確認することもできるそうだ(スマートフォンのアプリのOSはAndroidとiOS両方への対応を検討中)。

また「リモートMAV」では、本体にメモリーが搭載されているので、実際の走行シーンを録画して自由な視点で確認することも可能だという。録画時間などはメモリーのサイズ次第なので現在は未決定だが、ドライブの新しい楽しみ方としても提案できる可能性も。それに車両周辺の映像が記録できるということは、リアルタイムな走行録画も万が一の事故の際も含め、ドライブレコーダーの新しい形としての側面も持っていると考えられ、停車時、走行時共に安心・安全を提供する商品だと感じる。

そしてこの「リモートMAV」のさらなる可能性として自動運転に通じるのでは? と思い石尾氏に聞いてみると、やはりそういう事を視野に入れながら開発をされているそうだ。車載カメラが地面に書いてある枠や車両周の障害物などを検知して自動駐車を可能にしたり、全周囲の録画機能は自動運転時に万が一事故が起きてしまった際の検証にも役立つだろう。そしてミリ波レーダーなど他のセンサーとの組み合わせやセンシング機能と制御機能の統合なども視野に入れて開発されているそうで、それぞれのセンサーの得意・不得意な部分を補った発展性のあるシステムを目指しているそうだ。「リモートMAV」はまだ進化の先があると大きな可能性を感じさせてくれる内容だった。

「マルチアングルビジョン TM」開発ストーリーはこちら

南極観測船への搭載実績も。歴史あるセンサー技術に驚く


次に、今後さらに重要視されるセンサー技術についての展示を紹介しよう。これについては、同社のVICT技術本部 第三技術部 製品企画チームリーダ 野海薫氏に伺った。

今回の展示では交差点での歩行者検知などで効果を発揮する「前側方ミリ波レーダー」が展示されていた(周波数79GHzのショートレンジタイプ)。動作する距離は約80m、角度は約150度で広範囲に電波を発射して受信することができるセンサーだそうだ。前方はACC(アダプティブクルーズコントロール)用のロングレンジのセンサーが担い、その他方位を今回展示している前側方ミリ波レーダーが協調することで全方位に対応することができる。

ちなみに前側方のレーダー自体は2009年に製品化されていたそうで、当時の検知角度は約50度。そして今回展示しているレーダーが約150度と大幅な進化を遂げている。なお、全周囲を見るこのレーダーと、カメラによる画像解析を組み合わせ、これにより自動運転や自動駐車を可能にしていく事も考えているそうで、2020年前後を目標として製品化を目指しているとのことだ。

昨今こういったセンサー技術に関しては、各社が力を入れている。そういった中で「デンソーテン」の強みがどこにあるのか聞いてみた。

なんでも「デンソーテン」は、1950年代からレーダーの開発に着手していて、南極観測船「宗谷」への搭載実績も持っている。1970年代にはその研究分野を自動車にも拡げ、1997年にはダンプトラック用の障害物検知センサーとして「ミリ波レーダー」を実用化している。その後には、普通車用のレーダー量産にも成功し、後方用、前側方用など新商品を次々に開発してきた。

なお最新の同社の「ミリ波レーダー」技術では、例えば市街地でクルマと人が接近して通行しているシーンでも、両者を分離して検知できるように角度精度や距離分解能が向上している。

野海氏は、「この歴史に裏付けされた技術力をベースに、これからも安全・安心のためのシステムを世に送り出していきたい」とも力強く語っていた。

進化するテレマティクスの鍵はクラウド


デンソーテン「安全運転のためのテレマティクスサービス」

「安全運転のためのテレマティクスサービス」も展示されていた。これは、同社の通信型ドライブレコーダーである『G500Lite』のセンシング技術を使ったものだ。

ちなみに『G500Lite』とは、「専門知識を持った運行管理者のいない企業において、簡単・リーズナブルにドライバーの安全運転管理が行える」というものだ。『G500Lite』が開発される以前から、タクシー会社、バス会社、運送会社向けの『G500』というサービスがあり、当サービスでは、通信機能が備えられたドライブレコーダーを車両に装着することで、“もしも”の時を録画することが可能となっていた。

運行管理者がいる会社では、収集、解析されたデータを、運行管理者が自ら考えながら適正に活用していける。しかし、一般企業ではそうはいかない。なので『G500Lite』では、安全運転に繋げるためのデータ活用を、システム側で行えるようにした。ここに当サービスのバリューの肝がある。

さて、展示されていた「安全運転管理テレマティクスサービス」では、走行中に撮影した膨大な記録画像の中から事故につながる危険度の高いヒヤリハット画像を自動抽出することが可能で、そしてそのデータを集め解析し、どこがヒヤリハット地点なのかを把握でき、その情報を、自動でドライバーに伝えることも可能となっていた。

これについての詳細を、VICT技術本部コネクティッドサービス技術部の白石春樹氏に尋ねた。氏の話によると、展示においてのポイントは、性別/年代/時間帯/天候などの情報を走行データに付与することで、その時のドライバーの属性に応じたヒヤリハット情報を伝えることができるようになった点。運転者の属性や、日時によって刻々と変化する要素も加味されて、時々に応じて、より必要性の高い情報の提供が可能となるのだ。それをクラウドが全部自動で行ってくれるのである(ドライバーは、情報を音声で確認可能)。

これほど有益なクラウドデータは例えば一般向けにも活用出来る気がする。その点に触れると、計画はないが、データの質自体が非常に高いので例えば当社のカーナビゲーションなどに活用する可能性も考えられる、とのことだった。

「G500Lite」開発ストーリーはこちら

AIが未来を予想してタクシーを配車する


次にVICT技術本部コネクティッドサービス技術部タクシーAVMチームリーダの重松智史氏に、「AIを活用したタクシー配車システム」について話を伺った。

これはタクシーの需要予測をクラウド上で判断し提供する、というもの。つまり今のクルマの位置とニーズのあるエリアをクラウド側が判断して車両が不足しているエリアをマッピングしてタクシーへ提供する。

需要の不足は、常にクラウドにアップロードされる実車や空車といった走行履歴などの動態データによって把握することができる。また東京無線の協力で4000台の車両から過去2年間分の情報を取得しAIに覚えさせているそうだ。これらのデータから30分後を予測する。なおデータは次々にアップロードされていくので、日々精度は向上していくという。

渋滞情報との連携はこれからになるようだが、それよりも重要視しているのが、いま周りで起きている事象の情報と組み合わせること。季節的なものに関しては過去2年の蓄積があり、事故、電車の遅れ、天気などがわかることでより高い精度の予想ができる。

通信に関してはIP無線機を使うがこの中にはNTTドコモの3G通信モジュールが搭載されており、携帯電話の電波を使用。3Gは安定しているので品質を担保する意味でもこれを採用したという。また画像をアップロードするわけではないのでこれで十分なのだそうだ。実証実験は前出の通り、東京無線のタクシー4000台に装着し行った。東京無線はデジタル無線でもドライバー所有のスマートデバイスを活用することで既存の設備を活用してのサービス提供も視野に入れている。

情報はAIクラウドから直接ドライバーに配信される。将来はナビ画面で見られるようにも開発しているそうだ。このシステムには文字情報が表示できるハンディ端末も付いており、司令所などから迎車などの指示情報を表示するのに活用可能だ。ナビ画面には現在500m四方の区分けがされているので“需要に対して供給が不足している“ということが地図上にてひと目でわかる。

導入時期については細かいことはまだ決まっていないが、早い段階で導入していくことを検討中とのこと。

自分にしか聞こえない超指向性スピーカー


同ブース内にあった先進HMI(ヒューマンマシンインターフェイス)コーナーでは車載用の超指向性スピーカーを体験してみた。この製品を説明してくれたのは同社CI技術本部 第四技術部長の山崎慎一氏。

このスピーカーは音の直進性に優れドライバーだけに音声を流すのを目的として作られている。これまで民生用にはこのような商品はあったのだが、ようやく車載用に小型化できたそうだ。そもそもこのような商品を企画した理由はどこにあるのか聞いてみた。

運転中には、音が弊害を及ぼすさまざまな状況が想定できる。同乗者が寝ている場合なら、ナビの音声やハンズフリー通話の音声が聞こえてしまうと目が覚めてしまうこともある。またプライベートな会話を聞かれたくないケースもあるだろう。この超指向性スピーカーは、これらの弊害への対処が可能で、運転者ファーストな状況を作るのに最適な製品だという。

このスピーカー技術の核心はどこなのかを聞いてみた。肝は、振動板として使うガラスにあり、ガラスを薄くすることで小型化ができて車室内への設置も容易になるそうだ。スピーカーの可聴帯域を拡げようとすると振動板を大きくしたり、また厚くすると音圧が下がってしまうそうで、絶妙の薄さとサイズを実現するための研究が繰り返されたそうだ。

そして実際に再生される音声は超音波に乗せていて、超音波自体は非常に直進性に優れており、かつ、人間の耳は超音波を聞くことができない。結果、自分の位置のみで音声を聞くことができるようになる、という仕組みだということだ。アンプ自体にも特別な仕掛けはなく、超音波が出せる帯域のものであれば普通に再生できるそうだ。試しに体感すると、その差はハッキリと分かり、現時点で非常に完成度が高いと感じられた。聞いてみると、実用レベルまで来てはいるが、クルマの中は反射や吸音といった特殊な環境となるので、その辺も含めさらに技術を進めているところ、とのことだった。

おなじみ「ECLIPSE」AVNは20周年

この他にも2018最新ナビゲーションのタッチ&トライコーナーを用意。昨年発売し好評だったドライブレコーダー内蔵カーナビ「録ナビ」が機能を向上させて新登場するのだが、当機ももちろん展示されていた。実際触れてみると動作レスポンスが向上しており、UI(ユーザーインターフェース)の改良により使いやすさも向上している。

「録ナビ」開発ストーリーはこちら

今後のデンソーテンに注目!

今回の「東京モーターショー2017」での同社の展示内容は以上だ。こられの技術は、将来的な自動運転の実用化への貢献も大いに期待できるものばかりであった。その点でも今回の展示は見所満載で、エンドユーザーにもわかりやすいものとなっていた。

「デンソーテン」の優れた技術が、今後のクルマ社会でどのような役割を果たしていくのか、要注目。

デンソーテンのWEBページはこちら

《高山 正寛》

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