【MX-5カップ 世界大会】レベルの高さを実感! ファンサービスも充実の一日[後編]

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グローバル MX-5カップ 世界一決定戦 2017
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マツダレースウェイ・ラグナセカはカリフォルニア州モントレーにあるサーキットだ。モントレーはサンフランシスコの南に位置し、海に面した風光明媚な街。近くにはゴルフで有名なペブルビーチがある。サーキットは山側にあり、したがって高低差のあるテクニカルなコースレイアウトとなっている。

2001年にMAZDAが命名権を取得し、マツダレースウェイ・ラグナセカのサーキット名となった。その歴史は1957年に建造と意外に古い。15mもの高低差を一気に下り降りるシケインのコークスクリューが有名だ。筆者の記憶の中では、1996年のインディカーシリーズでアレックス・ザナルディがブライアン・ハータをコークスクリューでショートカットしながら抜き去ったレースが印象的である。

高レベルの本格的な闘い

さて、今回の「グローバルMX-5カップ」世界一決定戦で、そんなエキサイティングなシーンは見られるのだろうか? いよいよスタートが近づいてきた。これまでに練習走行が3回あり、やはり地元アメリカ勢ドライバーの速さが目立つ。出場ドライバーは、日本からの2名(山野哲也選手、大井貴之選手)の他、オランダMX-5カップチャンピオン、そして今年のインディライツ・チャンピオンを加えた19名で争われる。

レースは2ヒート制で、2レースを合計した順位で争われる。日本人ドライバーの予選順位はそれぞれ13位、16位と振るわなかったが無理もない。マシンバランスのセットアップとこの難コースの攻略を一度にこなさなくてはならないのだ。そんな中でも、インディライツ・チャンピオンのカイル・カイザー選手は6位と健闘している。彼は、地元出身でラグナセカはホームコースなのだ。

しかし、来年インディカーシリーズへの参戦が約束されているインディライツ・チャンピオンよりも速いタイムを記録したドライバーが、このMX-5カップシリーズ出場ドライバーの中に5名もいることに注目したい。レース前、カイル・カイザー選手は賞金を稼いで帰ると豪語していた。つまり、インディライツ・チャンピオンがMX-5 CUPシリーズドライバーに負けるはずがない、とでも言いたげな自信をのぞかせていたのである。そんな彼でもポールポジションは獲れなかったのだ。予選リザルトを受け取ったとき、MX-5カップに出場するドライバーのレベルが相当高いことをよく現した瞬間だと筆者は思った。

ファンとの距離も近いイベント

レース前には様々なセレモニーが催される。その中でとても印象的だったのが、出場ドライバーたちによるサイン会だった。グローバルMX-5カップシリーズには専用のトレーラーが2台以上あり、常にシリーズに帯同している。トレーラー自体、日本を走るトラックからは想像もつかないくらい大きなものだが、このトレーラーからテントを伸ばし大きなホスピタリティブースが誕生する。アメリカではよく見られる光景だが、そのスケールがとても大きい。

アメリカのレーシングコースは日本や欧州と違いピットロードにガレージが隣接せず、ほとんどの場合ガレージそのものが存在しない。いわゆるオープンピットで、チームはパドック内に各々テントを立て、その中で車両をメンテナンスし、走行時にだけ機材をピットロードに持ち込む。大きなレースだけは、主導権を持っているのでピットロード上にチームテントを張って拠点にしている。しかし、それでもピットガレージがないので、なにをやっているかは外から一目瞭然。F1のように、ピットガレージにマシンが入ってしまったら何をやっているかがわからなくなるようなことはない。このオープンピット方式が一つのアメリカ式ファンサービスの特徴でもあるのだ。

話を戻そう、その大きなホスピタリティスペースで出場ドライバーのサイン会を行うのだが、これが普通のパドック内ということもあり、お客さんが気軽にドライバーと触れ合える。日本のSUPER GTだと、ピットウォーク時にピットウォークに必要なアディショナルなチケットを買わないとドライバーに触れあえず、サインも貰うチャンスはなかなかない。しかし、MX-5カップではこのようにしてファンを作るお手伝いをしっかりと行っていることに感動した。ドライバーはそれぞれ自分のプロフィールを記したブロマイドを用意していて、ファンサービスもしっかりと行っている。日本人ドライバー2名も、そのあたりは抜かりなく、しっかりとファンサービスに精を出していた。

将来への期待膨らむレース

レースがスタートした、日本人ドライバー2名は練習時よりもかなりいい感じで走行している。走り込むにつれ、どんどん速くなっているように感じる。筆者自身も経験があるが、このようにライバルと真剣勝負することで練習走行では見えなかったものが見えるようになり、どんどん速くなっていくことがあるのだ。

ふと、モニターを見ると1台のマシンがコースアウト。グラベルの中を走り土煙を上げている。それはインディライツ・チャンピオンのカイル・カイザー選手だった。トップグループの中にいたはずなのだが、どうやら押し出されたか接触したかのようで、いかにこのシリーズを走るドライバー達がレベルの高い連中であるかがうかがい知れるというものだ。カイザー選手は、その後素晴らしい追い上げを見せたが、最後尾から4台をパスして15位で第1レースを終えた。

第2レースは、日本人ドライバーにとって悪夢のような展開となった。スタート後の1周目に1台のマシンが大井選手に接触して共にコースアウト。コースを横断した大井選手と山野選手が接触。共にスピンアウトを喫したのだ。それでも、両ドライバーは諦めず走り山野選手は11位まで追い上げ、大井選手は途中かなり挽回していたのだがマシンダメージが大きくピットに入りレースを終えた。

今回のレースを視察して感じたことは、MX-5カップに出場するアメリカのドライバーのレベルの高さだ。イコールコンディションがゆえに、レース中、終始テールツーノーズでバトルを繰り広げ、一瞬のミスで激しく順位が入れ替わる。とても質の高いレースイベントになっている。

筆者が考えるのは、日本人ドライバーがこのシリーズに挑戦し、揉まれ、レベルアップしてチャンピオンになり、ステップアップでインディカーシリーズにまで到達すること。欧州志向の日本人ドライバーの中に、このアメリカでのレースを目指す者が出てきて、第2の佐藤琢磨が誕生すれば、これほど喜ばしいことはないのだが……。そんなことを考えながら、サンノゼ空港を飛び立つボーイング787の機内からモントレー湾の輝きを眺めていた。

《松田秀士》

松田秀士

成仏する直前まで元気でクルマを運転できる自分でいたい。「お浄土までぶっ飛ばせ!」をモットーに、スローエイジングという独自の健康法を実践する。これまでにINDY500に4度出場し、ルマンを含む世界4大24時間レース全てに出場経験を持つ。メカニズムにも強く、レースカーのセットアップや一般車の解析などを得意とする。専門誌等への寄稿文は分かりやすさと臨場感を伝えることを心がけている。

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