JR北海道は11月7日、2016年度の線区別の収支状況を発表した。管理費を含めた営業損益は、2015年度に続き全線区で赤字。2016年8月に発生した台風被害で鉄道運輸収入が32億円減少するなど、深刻な経営状況が続いている。
全線区合計の営業損失は525億7600万円。2015年度に比べ113億9900万円悪化した。100円の収入を得るために必要な経費の指数(営業係数)は、2015年度より11悪化して166となった。災害復旧費などは特別損益として計上しており、線区別収支には含まれてない。
営業損失が最も大きかったのは、2015年度と同じ函館本線函館~長万部間の55億8600万円。これに札幌圏(札沼線桑園~北海道医療大学間、函館本線小樽~札幌~岩見沢間、千歳・室蘭本線白石~苫小牧間)の54億6700万円と、2016年3月に開業した北海道新幹線新青森~新函館北斗間の54億600万円が続いた。
釧網本線の東釧路~網走間は14億9700万円の赤字。営業収益は2015年度に比べ4500万円減ったが、運行本数の削減により人件費や業務費も減少し、赤字幅は1億2000万円縮小した。同様に列車の本数を減らした根室本線釧路~根室間も、赤字額が3800万円縮小の10億3800万円となった。
一方、石北本線の上川~網走間と石勝・根室本線の南千歳~帯広間は、2016年8月の台風被害で長期運休。運輸収入の減少と代行輸送の実施による経費増加で赤字が拡大した。上川~網走間は30億3900万円の赤字で、2015年度に比べ2億400万円の悪化。南千歳~帯広間の赤字額は17億2100万円拡大して34億700万円となった。
札幌圏は新千歳空港の利用者が増えたことなどにより、営業損益は2015年度より4900万円多い406億6800万円となった。しかし高架橋の老朽化対策などで修繕費が増えたことや、快速『エアポート』用の733系電車を増備したことで減価償却費が増加。営業損失は2015年度より32億9200万円増えた。
営業係数ベースで見た場合、台風災害で長期運休中の区間を含む根室本線富良野~新得間が全線区中最悪の2636で、2015年度に比べ782悪化した。運休中区間を含む線区を除くと、札沼線の北海道医療大学~新十津川間が最も悪い2609で、2015年度に比べ396悪化した。
2015年度の営業係数が最悪だった留萌本線留萌~増毛間は、2538から大幅に下がって715となった。同線区は2016年12月4日限りで廃止され、廃止前に沿線住民や鉄道マニアによる「お名残乗車」が多数あった影響で収支が改善されたとみられる。同線区に接続している留萌本線深川~留萌間も2015年度より355小さい987になり、1000を下回った。
営業係数が最も良かったのは2015年度と同じ札幌圏だったが、係数自体は8大きい113に。北海道新幹線の営業係数は146だった。
利用状況の指標となる1日平均通過人員(輸送密度)は、函館本線小樽~札幌間が全線区中最大の4万6060人。これに千歳・室蘭本線の白石~苫小牧間(4万4852人)などが続く。輸送密度が最も小さかったのは札沼線の北海道医療大学~新十津川間(66人)で、2015年度に比べ13人減った。2015年度の最小だった留萌本線留萌~増毛間は、200人以上増えて269人となった。
北海道新幹線新青森~新函館北斗間の輸送密度は5638人。2015年度の在来線(海峡線木古内~中小国間、3706人)に比べ約2000人増えた。新函館北斗駅で新幹線と接続している函館本線函館~長万部間も355人増の4134人で、4000人を超えた。