【スーパーフォーミュラ 最終戦】自陣とともに黄金期到来の王者・石浦宏明…「自分もチームもしっかり実力がついてきた」

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2017年スーパーフォーミュラ王者 #2 石浦宏明(手前のカップは17年のリボン未装着)。
  • 2017年スーパーフォーミュラ王者 #2 石浦宏明(手前のカップは17年のリボン未装着)。
  • 2017年スーパーフォーミュラ王者 #2 石浦宏明。
  • 左からセルモインギングの石浦(15&17年王者)、立川監督、国本(16年王者)。
  • チーム全体の力が石浦をサポートした。
  • 立川監督と石浦。GT500ではコンビを組んでレクサスLC500を走らせている。
  • セルモインギング陣営の記念撮影。
  • シリーズ2位、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したガスリー。
  • 最後は笑顔で終戦、左からシリーズ3位ローゼンクヴィスト、チャンピオン石浦、2位ガスリー。

2017年のスーパーフォーミュラは22日の最終戦決勝日が台風の影響で中止となり、前日の予選終了をもってシーズンエンド、セルモインギングの石浦宏明が2年ぶりの戴冠を果たした。3年連続王者輩出となったチームとともに「しっかり実力がついてきた」と石浦は語っている。

21日、スーパーフォーミュラ(SF)今季最終戦「第16回JAF鈴鹿グランプリ」の予選日は混乱の一日となった。正直なところ、天候は既に荒れ模様で、予選の実施もどうかというような状態だった。

2レース制の決勝グリッド(予選順位)を決める方式もいくつかの“事前想定”が為されたなかで、フリー走行~予選とセッションは進む。場合によってはフリー走行のタイムで予選順位が決まる、というような可能性もはらんだ、極度の緊張状態の連続による雨中決戦だったのである。タイトル争いが決する最終戦でドライバー、チームが味わった労苦は想像を絶する。

ドライバーズチャンピオン争いをリードして最終戦を迎えたのは#2 石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING/エンジンはトヨタ)。ただ、ランク2位の#15 ピエール・ガスリー(TEAM MUGEN/ホンダ)とは0.5点差であり、ポールポジション得点「1」(今回は2レース制なので計2点)の獲得状況次第では予選でひっくり返される可能性もある接戦だった。しかし結局、両者ともポール獲得はならず、決勝中止の決定によってタイトル争いにも0.5点差のままピリオドが打たれることに。

F1アメリカGPを欠場してSF王座を狙ってきた格好のガスリーは「この状況を受け入れるのは辛い。レースを戦って決着をつけたかった。残念だ」と語った。しかし来季トロロッソ・ホンダからのF1フル参戦が有力視される21歳、フランス期待の新星は「石浦選手には本当におめでとうと言いたい。こうして彼とタイトルを争ってこられたことは誇りに思う」と続け、石浦を祝福。

さらにガスリーは「今年このシリーズに参戦するのは大きな挑戦だったけど、ドライバーとしても、そして人間としても成長できたと感じている。日本という異なる文化のなかで、経験豊富で才能ある多くの選手と一緒に走れたことはとても素晴らしい機会だった」と話し、SF挑戦の旅を誇らしげに締めくくった。

そして、そのガスリーやシリーズ3位となった#7 フェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS/トヨタ)といった海外からの強力ニューチャレンジャーを打ち破って、一層価値が増したタイトルを獲得したのが石浦宏明である。

石浦は1981年4月23日生まれの36歳、東京都出身。最近多いエリートコースを幼少時から歩んできたわけではなく、遅い時期のデビューながらもレースで実力を示して次のチャンスをつかみ、多くの理解者を得るなどもしつつ、SFやSUPER GT/GT500クラスという日本最高峰レベルで戦うポジションを得た選手だ。青山学院大学理工学部入学という経歴も有している。

SFには2008年に初参戦(当時のシリーズ名はフォーミュラ・ニッポン)、今年で足掛け10年目となる。シートを失った時期もあったが、14年にセルモインギングから復帰を果たすと、翌15年に初優勝を飾り、そのまま初王座を獲得。昨年は僚友の国本雄資に王座を奪われるかたちにはなったが、彼とともにチーム部門タイトル獲得に貢献した。今年はチームにとって2年連続の2冠獲得となり、ドライバーズチャンピオンは3年連続輩出、石浦個人にとっては2年ぶり2度目の王座となった。

2017年SFチャンピオン 石浦宏明のコメント
「ついさっき(決勝中止=王座決定を)聞いたばかりで、まだ実感がなく、びっくりしています。レースができないのは残念ですが、タイトルを獲得できたことは素直に嬉しいですね。一戦一戦しっかり戦えたことがこの結果につながったと思います。横にいるガスリー選手のような才能あるドライバーたちと戦えたことが(ベテランである)自分にとってもいい経験になり、自信にもなりました」

「いいシーズンでしたし、チームに感謝したいと思います。僕の要求に応えて、常に万全の体制、最善の準備をしてくれました。そういう小さな積み重ねがあってのタイトル獲得だと思いますし、チームとして3年連続のドライバーズチャンピオン獲得、なにか不思議なくらいにチームが強いですね。(他と比べて)なぜ強いのかは分かりませんけど、チームワークよく戦えていると思います」

「毎年こうしてタイトルを獲れるというのはなかなかできることではないですよね。複数回タイトルを獲っているということは、自分も含めて、チームにしっかり(本当の)実力がついてきたのかなと思います。とても嬉しいことですし、チームには本当に感謝しています」

そのセルモインギングを率いるのは立川祐路監督だ。GT500では現役、石浦とコンビを組んで戦っている“プレイングマネージャー”でもある若い監督だが、SFで3年連続チャンピオン輩出、2年連続チーム部門タイトル獲得と、まさに黄金時代を築きつつある。

立川祐路監督のコメント
「明日、いいレースをすることができて(その結果、王座獲得を決められて)いれば最高だったんですけどね。でも、ここまでの積み重ねが石浦のタイトルとチームのタイトルにつながりました。そこはみんなの力による結果だと思います。特にチームタイトルは石浦ひとりで獲れるものではなく、去年のチャンピオンである国本の力もあってのものですからね。すべてのチームメンバーに感謝しています」

思えば、2014年のダラーラ製ワンメイクシャシー「SF14」導入、そして昨季からのヨコハマ製ワンメイクタイヤ採用という流れにうまく乗って、王朝期を迎えたような感もあるセルモインギング陣営。石浦は「F3時代にもダラーラには乗っていましたけど、攻めがいがありますし、特にこのSF14は気に入っていますね。SF14導入のタイミングでチームに呼んでもらってから、こうして(マシン開発の努力が結果という)かたちになってきていることは嬉しいです。今後もチームの強さに貢献していきたいと思います」と話す。

立川監督も手応えを語る。「決して毎年ラクに勝てているわけではないですし、今年もタイヤのスペックが去年から変わったところに苦労したりもしました。強力なドライバーも海外から来たりしていて、そのなかで連続してタイトルを獲るのは大変なことです。それを可能にしているのは、ドライバー、エンジニア、メカニック、チーム全体がひとつにまとまって同じ方向を向いて努力しているから、だと思います。それができていれば、この先もクルマが変わろうが、なにがあろうが、やっていけるだろうとは考えています」

SF14で戦う最終シーズンとなる来年、そしてさらに進化した「ダラーラSF19」が導入される再来年以降へ向けても、彼らの強さが発揮されていきそうだ。

石浦は当然、3回目の王座を狙う。「今日のトークショーで同い年(81年生まれ)のアンドレ(ロッテラー)が『おじいちゃんになるまで乗る』って言っていました(笑)。僕も速いマシンに乗るのは好きですし、2回で終わりにするつもりもないですから、3回目のタイトルを狙っていきます」。

石浦が再びカーナンバー1をまとって迎える2018年のSFは、4月に鈴鹿サーキットで開幕戦を迎える予定となっている。

《遠藤俊幸》

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