【アウディ RS5 海外試乗】この乗り味こそ最新の世界基準だ…桂伸一

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アウディ RS5クーペ
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  • アウディ RS5クーペと桂伸一氏
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世界のDセグメント・プレミアム2ドアスポーツクーペを横並びにした、とするとRWDが多数をしめるなかにあって、クワトロ4WDを持つアウディの存在意義は俄然高くなる。セレブが超高速移動を行うための全天候型の安全、安心と、安定した快適な走りを約束するからである。

アウディ『S5クーペ』をベースに、さらに速く、優れた操縦安定性と快適性と強靭さを蓄えた、アウディのスポーツ、スペシャル部門である「アウディスポーツ社」による最新、最強のDセグ・モデルが『RS5クーペ』である。

フランス・トゥールーズ空港から、RS5を借り出し、高速移動しながらまず驚いた事は、その上質この上ない乗り味の滑らかさだった。

通常、母国ドイツ・アウトバーンの速度無制限区間を“出せるだけ出す”超高性能クーペは、それ故に足回りは硬められ、あるいは可変サスペンションにより高速での姿勢変化を抑えるべく、少なからず硬さを感じさせるものだ。それは直系のS5クーペを含めて言える事。

RS5は、275/30ZR20のワイドで低偏平率のタイヤを装着するにも関わらず硬くない。いや正確にはタイヤそのものは確かな剛性による硬さを持つが、走行モードで、ダイナミック(スポーツ)を選択してもサスペンションは角のある硬い衝撃振動を吸収、逃がし、しなやかにストロークして路面からの衝撃を分散する。まるで可動する部分すべての周動抵抗が無くなり、その動きを減衰させるためのショックアブソーバーの精度が高品位に上質感を伴う動きをジワッと抑え込む印象だ。

オートルートでアクセルをひと踏みすると、呆気ない程瞬時に200km/hオーバー!! 速度リミッターが250km/hから280km/hにオプション設定された仕様だが、そこは未確認。RS5専用チューンを受けた2.9リットルV6ツインターボは、450hp/600Nmを8速ATと前後40対60の駆動配分によりエンジンン出力を伝達する。

そこから向かった先はピレネー山脈。フランスとスペインに挟まれた小さなアンドラ公国は、その山あいの美しい景色と街並は、ウインタースポーツシーズンが華の、超高級リゾートに変身すると言う立地。山岳路をくねくねと地元民のペースに合わせて追走し、個々に別れて行くと、その先に開かれた道は欧州に良くあるカントリーロード。まさにドイツ・ニュルブルクリンク(新型車開発の聖地)もかくや。と、ニュルを彷彿とさせる低~中~高速コーナーが滑りやすい路面状況で連続する。

そこでRS5のアクセルを再び深く踏み込むと、動画でも確認できるが、限られた区間を弾かれた加速G(0-100km/h加速3.9秒)で猛ダッシュし、400
mmと大径なセラミックディスクと6ポッドキャリパーが、ブレーキ操作と同時に“ガツン”と「足応え」と共に後ろから引き戻されたかのように急減速、頼もしい!! このエンジンパフォーマンスに、この停まる能力は必須である。

コーナーがまた痛快だ。ステアリング操作に忠実に正確に曲がる。それは前輪の舵角が生む力だけではない、別の作用で曲げられる感が強く感じられる。砂の浮いたS字カーブで、本来ならアンダーステア方向にノーズが逃げる。しかしRS5には後輪左右の駆動トルクを移動させるスポーツデファレンシャルが備わる。これ、キャタピラを想像してもらえばいいが、例えば右旋回の場合は左輪が多く回転し、右輪は少ない回転。後輪がそれを行うため、まさに前輪の舵角とともにアンダーステア知らず、コーナーを尋常ではない速度で駆け抜ける。

笑っちゃうほど速いのに乗り味は上質な快適さ、という点がRSという最強シリーズなのにどうかとは思う。がしかし、世界のハイパフォーマンスモデルのいまは、すべてがこの方向で、RS5の乗り味こそ最新の世界基準だと思う。

しかもこの走りを展開しながら燃費は欧州モードで8.7リットル/100km(11.4km/リットル)、CO2排出量197g/km。と、そのパフォーマンスからすると信じられない高数値。48V化、EV化を進めるアウディにあって、内燃機関の可能性もまだまだ示し続けるつもりである。

桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。

《桂伸一》

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