精密モデルカーブランドとして定評のある「オートアート」から、人気コミック『湾岸ミッドナイト』(作:楠みちはる)の登場車を再現するシリーズがラインナップされている。
「ミニカー検証」第3回目は、その第1弾モデルである『日産フェアレディZ(S30)湾岸ミッドナイト 悪魔のZ』と、第2弾モデルである『ポルシェ 911(930)ターボ湾岸ミッドナイト ブラックバード』を紹介する。
●日産 フェアレディZ(S30)湾岸ミッドナイト「悪魔のZ」
本ミニカーは物語の主人公であるアキオが駆る、悪魔のZを再現したものである。原作が進むに連れて悪魔のZはバージョンアップしていくが、その中でも物語序盤のハイライト、大破炎上からの復活後の状態をターゲットとし、完全モデル化している。
例えば、ドアミラー。悪魔のZ初登場時はフェンダーミラーだが、クラッシュしてからは空力を意識した小型ドアミラーに変更されている。また、テールランプは復活前後でいわゆる「ツーテール」から「ワンテール」へと変更されている。これらの変更はもちろんミニカーに反映されている。
原作では悪魔のZのチューニング内容を示唆するセリフが数多く散りばめられており、そのセリフたちから、もし実在したらどのようになっているかを想像するのも、コミックの楽しみの一つである。本ミニカーはそういったセリフの一つ一つをピックアップし、丁寧に落とし込んでいる。その佇まいは、70年代の車で公道300km/hという、ともすれば荒唐無稽とも言える原作設定を十分な説得力で具現化している。
[全景]まさに悪魔のZである。低められた車高、機能を追求したエアロパーツによる独特のフォルムを完全モデル化。
[ボディ]このミニカーを見て初めて悪魔のZのボディカラーがよくわかる。
[ヘッドライトカバー]最高速を追い求めるために欠かせないパーツ。原作ファンでもヘッドライトカバーの存在を知らない諸氏も多いのではないか。
[正面]特徴的なフロントバンパー。そこから覗く大型インタークーラーが大パワーエンジンの発熱量を予感させる。
[フロントバンパー下部]車体下部へ空気の流入を防ぎ、リフトを抑制する形状。他のZでは見られない特徴の一つである。
[オーバーフェンダー]ボディーワークの天才、高木の手によるオーバーフェンダーは、リベット止めではなくシームレスなタイプ。
[ドアミラー]空力を追求した小型軽量タイプのドアミラーも再現。
[エンジンルーム]公道300km/hを実現する心臓部、L28改ツインターボエンジンを再現。大容量サージタンクやキャブレター、タービンはもとより、ウェイストゲートまでも再現。
[ホイール]原作では確認しづらい形状のホイールも、ミニカーなら様々な角度から眺めることができる。また、300km/hオーバーから確実に減速するための大径ブレーキローターが、ホイールぎりぎりに広がっている。
[足回り]原作でも初登場時に少しつぶやかれたセリフでしかわからない、「ピロ足」を再現。
[燃料タンク]「Z432R特別仕様車」にのみ装備されていた100リッターの燃料タンク。「100リッター入るんだヨ」のアキオのセリフから再現。
[リアビュー]コミックス表紙でよく見られるリアビュー。特徴的なダックテール形状のリアスポイラーでドラッグを減らしながらもリアの安定化を狙う。大口径のマフラーがハードチューンのターボカーであることを主張。
[内装]ロールケージ、バケットシート、4点式シートベルトに換装。地上の戦闘機にふさわしいコクピットである。
[メーター類]最高速マシンらしく、スピードメーターは340km/hフルスケール。また、ほとんど見えないが、ブーストメーターも装備。
●ポルシェ 911(930)ターボ 湾岸ミッドナイト「ブラックバード」
原作でのブラックバードは、主人公アキオが駆る悪魔のZの最大のライバルである。「首都高速湾岸線の黒い怪鳥」とも呼ばれるモンスターポルシェを操るドライバーは、高校生のアキオとはある意味対極とも言える、腕利き外科医の島達也である。
物語冒頭では、友人である晶夫を死に追いやった悪魔のZを憎んでいたが、島は次第にアキオと悪魔のZの走りそのものに魅了されるようになる。それからはZ同様に地獄のチューナー北見淳にチューニングを依頼、バージョンアップとバトルを繰り返すことになる。
本ミニカーは、物語冒頭、悪魔のZが本格的に始動するまで湾岸最速を誇っていた、「930型911ターボ」がベースのブラックバードを再現したものである。原作での登場期間はあまり長くはないが、初登場シーンにて圧倒的な速さを披露し、読者に強烈なインパクトを残している。
実車の930型911ターボと言えば、1975年のデビュー当時、ノーマルでも無敵の速さを誇っていた。1980年代にやっとターボ黎明期を迎える日本車では、チューニングをしても太刀打ちできる存在ではなかった。
その930型911ターボをさらにチューニングしたブラックバードが、湾岸の帝王として降臨していたのは必然である。しかしながら、それに対抗する悪魔のZが約20年前の車をベースとしていることに、チューニングのロマンを感じずにはいられない。
先述のとおり、930型911ターボのブラックバードは登場期間が短く、チューニング詳細はあまり語られていない。そういった中でのモデリングは、悪魔のZよりある面では苦労が多かったに違いない。
[全景]湾岸の帝王と呼ばれるブラックバードにふさわしい風格。品行方正なスポーツカーの名門としての一般的なポルシェとは違った、孤高の存在感が漂う。
[バンパー]唯一無二のスタイルを構築するフロントエアロバンパー。グリルに見えるオイルクーラーも特徴の一つ。
[サイドビュー]ドアミラーは空力重視の小型タイプ。インテークダクトにはスリットがつく。
[リアビュー]獲物を狙う獣のような佇まい。専用バンパーで躍動的なスタイリングを表現。
[リアタイヤ]911の特徴である太いリアタイヤは、さらに極太なものに換装されている。ホイールリムが曲がっても交換できる3ピースホイールを採用。通常ならレースカーの装備だ。
[ブレーキ]減速できる保証が得られて初めて、最高速にトライできる。
[エンジンルーム]レースカーで使用されているものと同等の大型インタークーラーが装備されている。
[エンジン下部]水平対向ターボならではの独特なレイアウト。タービンは大容量のものに換装。
[マフラー]マフラーは出口がデュアルタイプ。独特のドロドロしたサウンドが聞こえてきそうだ。
[室内]激しいGに耐えるため、フルバケットシート、4点式シートベルトを装備。ボディ剛性の高い911なので、ロールバーは乗員保護が目的か。
[メーター]ポルシェ伝統の5連メーター。スピードメーターは340km/hフルスケール。
[センターコンソール]センターコンソールには、ノーマルにはない計器類やスイッチ類、ブースト計などが並ぶ。
本ミニカーを手にとって貰えれば、ブラックバードが放つ存在感や、チューニングカーが持つアウトローな魅力が感じられるはずだ。同シリーズの悪魔のZと並べることで、その魅力は最大限に引き出される。原作の様々な場面が去来し、それが目の前にあることに感動を覚える。
ちなみに今回紹介した「悪魔のZ」、「ブラックバード」に続く第3弾として、この作品のヒロインでモデルの秋川零奈の愛車、日産『スカイライン GT-R(R32)』も近日中に発売されるようだ。
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