【アウディ R8 試乗】見かけは似てても中身は別物…斎藤聡

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アウディ R8
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ステアリングスポークの中央付近に左右2個ずつ計4つ並んだスイッチ。まずは右上の赤いボタンを押す。短いクランキングの後、弾けるようにV10エンジンが目覚める。その後、左下側の小振りなスイッチを押し、パフォーマンスモードをセレクト。さらにそのスイッチを右にひねってDRY(ドライ)モードにセット。はやる心を抑えながら、セレクターをマニュアルモードにしてピットロードを走りだす。

ピットエンドからアクセルオン。その瞬間V10エンジンが背中で咆哮を上げ、強烈な加速とともにコースへ走り出す。

新型アウディ『R8』の試乗会が富士スピードウェイ(FSW)で行われた。R8についてはすでに概要が紹介されているが、改めて簡単に説明しておこう。


◆最新技術搭載のミッドシップ・スーパースポーツ

R8はアウディの誇るミッドシップ2シーターのスーパースポーツカーだ。ミッドシップレイアウトを採用しながら駆動方式はクワトロシステム(=4WD)としているのも特徴の一つ。今回のモデルチェンジでビスカスカップリングを使ったものから電子制御の油圧多板クラッチを用いた4WDシステムに変更された。前後駆動配分は、理論上100対0から0対100といえるが、実際には10対90くらいを基本に50対50の範囲で駆動配分するはず。

この油圧多板クラッチは、エンジンレスポンスやサスペンションの硬さなどのセッティングを選べるアウディドライブセレクトと統合制御されている。走行モードは、コンフォート、オート、ダイナミック、カスタムのほか、V10プラスではドライ、ウエット、スノーが選べるパフォーマンスモードが追加された。

またリヤデフには加速側25%、減速側45%のロッキングファクターを持つ機械式LSD(リミテッド・スリップ・デフ)が装備されている。

搭載するエンジンは自然吸気の5.2リットル V10で、R8 V10は540馬力。R8 V10プラスが610馬力。2つのチューニングが用意され、トランスミッションはセミオートマの7速Sトロニックと組み合わされている。

ちなみにこのエンジンは、シリンダー内に直接燃料を噴射する直噴FSIと、インテークマニホールド内に燃料を噴射するMPIを組み合わせ、燃焼室の充填効率を高めている。また、パワーだけでなく低負荷領域では片バンクの燃料噴射と点火を休止するシリンダー・オン・デマンドも採用。休止時間により反対側バンクに休止を切り替えるといった技術も盛り込まれている。

フレームはアルミとCFRPを使った最新のアウディスペースフレームで、フレーム重量はわずか200kg。アルミを多用した外板によりV10プラスはボディ重量1454kgと軽量に仕上がっている。

インパネもR8の特徴の一つになっている。インパネ内が液晶モニターになったアウディバーチャルコックピットが採用されている。スピードやタコメーターを画面両端に小さく表示しながら、中央にナビ画面やMMI(マルチメディアインターフェース)が表示できる。パフォーマンスモードをセレクトすると、中央に大型のタコメーター画面が表示される。タコメーター周辺には、Gメーターや4輪の空気圧表示、タイヤ温度、パワーメーターなど様々な情報が映し出せるようになっている。


◆コーナリングも直進性も、抜群の安定感

1コーナーを2速でクリアして、下りの直線でフラットアウト。R8は大迫力の加速を披露してくれる。スピードメーターが180km/hを振り切ったところでブレーキング。左コーナーとなるサントリーコーナーに向けて、ブレーキを残しながらステアリングを切り込んでいく。

クルマが不安定になるシーンだが、R8はあっけないほど素直にコーナーをクリアして見せた。先代R8なら、ミッドシップならではのリヤの重さが慣性となりリヤが滑り出す場面だが、新型はどっしりと安定していて不安定な仕草さえ見せない。続く100Rも同様。高速旋回中にアクセルによってスピードコントロールを行うがリヤの不安定さは微塵も感じない。

途中をすっ飛ばしてホームストレートでは軽く280km/h(V10プラス)をマークして見せた。その際の安定感も抜群だった。

FSWの後半セクション。ダンロップコーナーから最終コーナーまではタイトなコーナーが続く比較的車速の低い区間のため、パフォーマンスモードに用意されているドライ・ウエット・スノーの、主に4WDの駆動制御について確認してみた。


◆3種類のパフォーマンスモード、様々なロードコンディションに対応

ドライモードは後輪駆動寄りで、後輪を中心に駆動力を発生。リヤが滑るとフロント側に駆動トルクを分配。アンダーステアの度合いが少なく旋回加速が効く。

ウエットはドライモードに比べると前輪への駆動配分があらかじめ多めにプログラムされているようで、前輪の駆動感が強めにある。タックイン(アクセルをオフにして前輪に荷重移動させることでリヤのスライドを誘発する)を使ってリヤを滑らせるような操作をした時もリヤのスライドは控えめ。軽くリヤがスライドした状態でアクセルを踏み込むとかなり強めに前輪が駆動力を発揮しているように感じられる。旋回加速を試みるとアンダーステアがやや強めに出る。

スノーモードは、感覚的には前後40対60くらいの駆動配分のフルタイム4WDといった印象で、ハードなウエット路面でも安定感は抜群。タックインはかなりメリハリを利かせて行わないと姿勢が崩れにくく、リヤが滑っても、アクセルを踏み込んだ途端前輪が外に逃げていく。タックインで十分向きを変えて(イメージとして)真っ直ぐ立ち上がるイメージの走り方となる。

スノーモードはアウディ『RS4』などハイパフォーマンスなフルタイム4WDに似た挙動が現れ、かなり慣れ親しんだものであることに驚かされた。

R8はクワトロシステムに電子制御多板クラッチ(≒ハルデックスカップリング)を得たことでスーパースポーツらしい走りから、フルタイム4WDの圧倒的なスタビリティを備えた走りまで手に入れることができた。

一見しただけでは、スタイリングに先代R8と大きな違いは見つけにくいかもしれないが、中身は別モノ。アウディらしいミッドシップ・スーパースポーツの登場だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

斎藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。
《斎藤聡》

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