【ポルシェ 911カレラ 海外試乗】想像を遥かに超えた「ジェネレーション2」…山崎元裕

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ポルシェ 911カレラS
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ポルシェの991型『911』が、続々とマイナーチェンジされている。ポルシェ自身はそれを、「Gen.2=ジェネレーション2」の991とも表現するが、それは今回のマイナーチェンジが、きわめて大きな規模で行われていることを意味するものでもある。

今回試乗したのは、その第一弾モデルとして発表された、RWDの「カレラ」と「カレラS」。ポルシェからはすでに、「カレラ4」と「カレラ4S」からなる4WDモデル、そして2016年1月に開催される北米国際自動車ショーでは、「ターボ」と「ターボS」が正式発表されることも先日明らかにされた。Gen.2の991型911は、驚くほどの速さで、そのバリエーションを拡大している。

991シリーズのコアモデルともいえるカレラ・シリーズは、今回のマイナーチェンジで、リアに搭載される水平対向6気筒エンジンをツインターボ化した。これは排気量を縮小し、そのハンデをターボによって解消するとともに、環境性能の向上を図るという、いわゆるダウンサイジングのテクニカルトレンドを追ったものだが、ポルシェはそれを「ライトサイジング」、すなわち最適なサイズを検討した結果であると表現する。

参考までにその排気量は3リットル。カレラ用のそれでは370ps&450Nmの最高出力&最大トルクが、また高性能なカレラS用では420ps&500Nmのスペックが得られている。ミッションは7速MTと7速PDKの選択が可能だが、こちらももちろん改良型。ボディーバリエーションはクーペとカブリオレの2タイプで、カレラ4&カレラ4Sに用意されるタルガは、カレラ&カレラSにはラインナップされない。

このモデルラインナップに加え、サスペンションはスタンダードな仕様に加えて、スポーツサスペンションをオプション設定。さらにスポーツクロノパッケージもオプション選択が可能であるし、カレラSではリアアクスルステア、すなわちターボやGT3から継承された4WSシステムも装備することができるから、どのような仕様をオーダーするのかは、これからそれを手に入れようとするカスタマーを、大いに悩ませることになるだろう。

今回のスペイン領のカナリア諸島、テネリフェ島で開催された試乗会で、おもにステアリングを握ったのは、カレラSの7速PDKという仕様のカブリオレだった。オプションではスポーツクロノパッケージが選択されていたものの、リアアクスルステアや、軽量性とともに圧倒的な制動力で定評のあるPCCB、あるいはスポーツエグゾーストというアイテムは装備されていなかった。

ドライブを始めて、まずこれまでのモデルからの変化を感じたのは、7速PDKの制御だった。この7速PDKは、もちろんシフトレバーやパドルによってマニュアルシフトすることも可能だが、それを必要としないほどに、アクセルペダルの動き、そしてドライバーの意思を忠実に反映した制御が行われる。

さらにツインターボによる過給を受けるリアの水平対向6気筒エンジンはワイドなトルクバンドを持ち、ターボラグというものもほとんど感じさせない。ポルシェはカレラとカレラSのパワー差を、ターボのコンプレッサーホイールのサイズや過給圧、そしてエンジンマネージメント、エグゾーストシステム等々によって生み出しているが、個人的にはオプションのスポーツエグゾーストシステムを選択した、カレラのエンジンフィールが最も魅力的に感じられた。

エグゾーストサウンドが、自然吸気時代からほとんど変化していないように感じられたのも嬉しかった。つまりこのポルシェの新型ツインターボエンジンには、いわゆる自然吸気エンジンに対してのハンデ、あるいはネガというものが一切表れていないのだ。改めて考えてみれば、ポルシェは1970年代中盤からターボエンジンの進化を現在まで続けてきた。今回の新型カレラ&カレラSにおいても、過給気の冷却システムなどに象徴される、その独自のメカニズムの詳細を知れば知るほどに、ポルシェ流エンジニアリングの魅力が明らかになる。

スポーツクロノパッケージの装着車では、ステアリングホイール上に、あの『918スパイダー』のようなロータリースイッチが備えられ、それによってノーマルからスポーツ、スポーツプラスへとドライブモードを変更できる。ノーマルモードでも、パワーユニットやサスペンションのフィールは十分にスポーティで、ワインディングロードでも実に軽快な動きを楽しむことができる。さらにこのスイッチのセンターには、20秒間のみエクストラのトルクを得ることができるスイッチが備わるが、あえてそれを使いたいと感じる場面には遭遇しなかった。

オープンモデルとしての快適性、そしてこちらもマイナーチェンジで一気にその機能や操作性を高めた、新型のインフォテイメントシステムの魅力も報告しておかなければならないところ。Gen.2の991型911、その商品力は、試乗前の想像をはるかに超えるものだった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期 にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。

《山崎 元裕》

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