【畑村エンジン博士のe燃費データ解析】その5…日本のガラパゴス化の要因は10・15モードにあった

エコカー 燃費
歴代トヨタプリウス。左から2代目、初代、3代目(現行型)
  • 歴代トヨタプリウス。左から2代目、初代、3代目(現行型)
  • 【畑村エンジン博士のe燃費データ解析】画像10:「e燃費」と「JC08燃費」のまとめ
  • スズキ アルト
  • スズキ アルトのCVTシフトレバー
無段階変速機「CVT」と『プリウス』に代表されるハイブリッド車は、日本国内で販売される自動車のパワートレインの主流となってきている。諸外国と比較するとガラパゴス化しているように見えるこの現象は、日本の道路事情が原因であるといわれる。平均車速が低くスムーズな変速が求められるため、ハイブリッドやCVTの燃費が良好であるというわけだ。

本コラムでは、実燃費投稿サービス『e燃費』のデータを使ってハイブリッドとCVTの実用燃費を解析し、前述の原因説を検証する。第4弾は、各国のカタログ燃費の計測モードの違いを改めて明確にした。最終回となる今回は、検証の結果見えてきた意外な真実を報告する。


◆解析における懸念点と補足事項

CVTとハイブリッドという日本のガラパゴス化を象徴する技術に注目して、Bセグメントに属する機種のe燃費データを解析した。その結果を画像10にまとめて示す。ただし、e燃費が日本の車の使われ方を代表しているかに関して次の様な懸念がある。

1:ユーザーにお願いして得た情報はどのくらい正確か? 恣意的なデータが入っていないか?

2.:情報を提供してもらうユーザーが偏っていることはないか? 地域、年齢層、性格など日本の代表とみなせるか?(デミオのディーゼルとガソリン、アルトのMTの例)

3:走行距離とe燃費値で異常データを排除したが、その方法は適切か?

これらの懸念はあるが、解析結果はパワートレイン毎の特徴が表れているとともに、合理的に説明できる傾向を示している。


◆e燃費データ解析から見えた“日本のガラパゴス化”

この解析が日本の車の使われ方を代表していると仮定すれば、次のような結論を導くことができる。

1:CVTとハイブリッドは実用燃費とカタログ燃費の乖離が大きい(60-70%)。

2:MTとATは実用燃費とカタログ燃費の乖離は大きくない(70-80%)

3:CVTの実用燃費は高圧縮比エンジン搭載にもかかわらずMTとATと同等レベルである(13-18km/リットル)

4:トヨタとホンダのハイブリッドの実用燃費は同等で、ガソリン車比42%向上している。(ただし、カタログ燃費は+66%)

5:ディーゼルエンジンはハイブリッドに匹敵する実用燃費を示す(20-24km/リットル)

6:AMTの採用に踏み切ったアルトAGSの実用燃費はJC08と逆転してCVTを上回る。

以上のことから、日本のガラパゴス化は日本の道路事情に適応した結果ではなく、特殊な10・15モードに適応した結果であると結論づけられる。


◆今後の展望と提言

BMEP18bar(正味平均有効圧、出力単位はbar)(※5)で始まった過給ダウンサイジングは、最新のものではBMEP22bar程度に高まり、高性能バージョンではBMEP25barを超えるところまで来ている。ヨーロッパで2017年からの導入が検討されているWLTPへの移行に伴い、運転領域がNEDCより高負荷領域に移動する。それに対応するためにヨーロッパでは過給ダウンサイジングに代わって過給ライト(適切)サイジングの開発がすすめられている。

マツダが圧縮比の高い(14)SKYACTIV-Gの長所として、低負荷領域を除き過給ダウンサイジングより熱効率が高いことを謳っているように、走行モードがWLTPへ移行すると圧縮比が低い(10-11)過給ダウンサイジングの燃費優位性が低下する。そのため、BMEPを20bar程度に抑えて、ミラーサイクルとクールドEGRを使って圧縮比を高めるのがライトサイジングである。

日本メーカーもWLTP(※6)の導入に向けて技術開発を加速する必要があるが、伝達効率の低いCVTの扱いが問題である。すでに多大な設備投資をして製造コストも低下したCVTと決別する重大な意思決定が必要となるかもしれない。設備投資をしなかったマツダは、カタログ燃費の低下に目をつむって6ATに移行した。このマツダの英断に他の日本メーカーは続くのであろうか。

また、日本のフルハイブリッドの実用燃費は優れているが、過給ライトサイジングのマイルドハイブリッドが登場した場合に、その効果とコストの比較で競合力が維持できるのか不安が残る。

e燃費を分析して、欧米では普及しなかったCVTとハイブリッドが日本で普及したガラパゴス化の理由が見えたように思う。WLTPの導入に見られるように世界は実用燃費重視の方向に動いている。これからはe燃費のような実際に使われている車の燃費データの質と量を向上させ、それを適切に分析することで、パワートレインの技術の方向付けに利用していくことが重要になってくるだろう。

《文:畑村 耕一》
《まとめ・編集:吉澤 亨史》

<専門用語解説>
※5:BMEP(Brake Mean Effective Pressure):正味平均有効圧、排気量あたりのトルクに比例する。
※6:WLTP(Worldwide harmonized Light-duty Test Procedure):小型車の世界共通排出ガス試験法、日本も含めて近い将来の世界の燃費基準になる。
《吉澤 亨史》

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