デザインからして、どきっとするカタチである。街で見かけても駐車場に止めてあっても、「お?」と振り向いてしまう独特の顔立ち。
車内にはいると、さらに「おお!」である。大きな面積を持つフロントガラスは、外から見るよりも内側からのほうが、その大きさを実感できる。広い。そして明るい。まわりの景色がこれほど身近に感じられるというのに、不思議と不安も怖さも感じないのは、『グランドC4ピカソ』が持つ、ドライバーを包み込むようなインテリアのなせる業だろう。
いざ、運転しようとしてさらに「おお?」となるのは、シフトレバーの位置である。ハンドルに生えている。最近は、操作性を重視して、ハンドルの近くにシフトレバーつけることがあるものの、グランピカソの場合は、まさに「生えている」のである。ハンドルの奥に、まるで、カキ氷につき立てられた柄の長いスプーンのように。そんな位置にあっても、操作性は悪くない。走り出したらあとは、パドルシフトでこと足りるし。
ただ、車庫入れでリバースに入れようとすると、そばにあるウィンカーレバーと間違えることたびたび。マイカーになれば、そんなこともなくなるのだろうが、数日間という試乗期間のあいだ、どんくさい私は結局、最後までワイパーを動かし続けた。
街乗りではちょっともてあましそうな大柄なボディも、高速道路では抜群の快適さを提供する。サスペンションのしなやかさもさることながら、加速が面白い。特に高速からの加速。時速80~90kmあたりからアクセルを踏むと、余裕で速度が上がっていく。その上がり方はパワフルに押し出すというよりも、まるで速さをそっと上乗せしていくという感じなのだ。この、楚々としたふるまいは、かなりしびれる。いいなあ、この味付け。
安全装備についても抜かりなく、高速で使える車線逸脱防止装置は、シートベルトを揺らして教えてくれる。後部座席で眠っている人を不用意に音で起こすこともなく、そんな配慮もうれしいのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。