大幅なマイナーチェンジが実施されたポルシェ『カイエン』。そのラインナップで最も注目される存在といえるのが、プラグインハイブリッド車(PHV)の「カイエンS E-ハイブリッド」だ。
これまでにもポルシェは、カイエンにハイブリッドモデルの「S ハイブリッド」を用意していたが、HVからPHVへと進化したことで、フル充電から36kmものEV走行が可能となった。CO2排出量は79g/km。その環境性能はSUVとしては圧倒的ともいえる。
鮮やかな蛍光グリーンのブレーキキャリパーや、それと同色のエンブレムなど、エクステリアでこのカイエンが、S E-ハイブリッドであることを主張するパートは少ない。注意深くディテールを観察すれば、左側のリアフェンダーにはプラグインのための新たなリッドが設けられていることにも気づく。エネルギー容量が10.8kWhというリチウムイオン式バッテリーは、ラゲッジルームのフロア下に収納される。SUVとしての機能性が、ほとんど損なわれていないのは嬉しい。
キーを捻り、走行のためのシステムを起動すると、バッテリーの残量があるかぎりは、まずEV走行を行う「Eパワー」モードが自動的に選択される。エレクトリックモーターの最高出力は95ps。これに333psの3L・V型6気筒+スーパーチャージャーエンジンを組み合わせ、システム全体では416psの最高出力を発揮するというのがパワーユニットの構成だ。ミッションは8速AT=ティップトロニックS。駆動方式はフルタイム4WDとなるが、機械式のトルセンデフをセンターデフに使用するのはメカニズム面での大きな特徴だ。
Eパワーモードでも、その走りは実に軽快だ。さらにアクセルペダルを踏み込むとエンジンがスタート。実にダイナミックな加速がここから始まる。逆のプロセスもまた同様で、この一連の動きにはまったく違和感というものがない。カイエンS E-ハイブリッドにはほかに、「ハイブリッド」、「スポーツ」、「Eチャージ」という走行モードが備わるが、現在の段階ではそのスイッチはドライバー自身の選択に委ねられる。将来的にはナビゲーションシステムとの連携による、オートマチックの走行モード選択などにも期待したいところだ。
サスペンションの味付けは、比較的乗り心地重視といった印象だが、ポルシェ製SUVとしてのスポーティーな感覚は、確実にこのモデルにも受け継がれている。運動性能と環境性能を究極の域で両立させた、カイエンS E-ハイブリッド。それはカーライフのスタイルそのものを変化させてくれる一台ともいえる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
山崎元裕|モーター・ジャーナリスト(日本自動車ジャーナリスト協会会員)
1963年新潟市生まれ、青山学院大学理工学部機械工学科卒業。少年期にスーパーカーブームの洗礼を受け、大学で機械工学を学ぶことを決意。自動車雑誌編集部を経て、モーター・ジャーナリストとして独立する。現在でも、最も熱くなれるのは、スーパーカー&プレミアムカーの世界。それらのニューモデルが誕生するモーターショーという場所は、必ず自分自身で取材したいという徹底したポリシーを持つ。