14年のカー・オブ・ザ・イヤーはマツダ『デミオ』に決定した。私の配点はメルセデスベンツ『Cクラス』に満点の10点、デミオには9点としたが、デミオが提示した国産車同クラスの中での作りこみ、内装デザイン、走りの基本性能と環境性、そしてディーゼル普及への期待感など、14年のカーオブザイヤーの名誉に値することに異論はない。素直におめでとうと言いたい。
ただこの1点差は私の中では限りなく大きいと考えている。ではCクラスを私がどう評価したかを話そう。
ボディにアルミを多用して70kgも軽量化、小排気量でも優れた加速力と燃費性能を実現、そして『Sクラス』と見まがうほどの内装品質の高さにメルセデスの本気もうかがえた。
そして何よりもその走りの基本性能の高さだ。とくにサーキットを走ったときにその限界領域での扱いやすさに感動すら覚えた。もちろんカー・オブ・ザ・イヤーが総合評価であって走りがどうのこうのを語るべきではないと思いつつも、そこに触れないわけには訳にはいかない。
昨今の多くのクルマは自動ブレーキやスピン防止装置などの電子デバイス装着をアピールする傾向にあるが、私としては実際に運転していささか頼り過ぎに感じることが多い。最終的に事故を防ぐのはクルマではなくドライバーである。いかに優れたデバイスを装着しようが、完全自動化が果たせる日までは、運転者の自覚がなくては安全は守れない。Cクラスに関してもハイテクデバイス満載だしそのレベルも極めて高いが、最後は運転者の責任を果たせるよう走りの基本性能の向上にも手を抜かない。それがサーキットを走ったときに見えた。
こういう運動性は、悪天候の条件下や危険回避の際、あるいは山道などでの安心感や快適さとして存分に発揮されるはずだ。そして車両を制御するのは最終的には運転者だと伝えてくる。きっと電子デバイスが効率的に働かない場面でも、運転者の意識を高めることで、安全をもたらしてくれるはずだと信じている。
もう一度、日系メーカーは、電子デバイスに頼りすぎずに車体の基本性能に注目し、乗り心地と走りの融合、操縦安定性の高さを目標とし、追いつけ追い越せの気持ちで開発を進めてほしいという気持ちを込めた一点であった。
無論、デミオは14年のカーオブザイヤーにふさわしい出来栄えだし、走りの基本性能も国産同クラスの中で優れていたことを再度付け加えたい。
メルセデスベンツ『Cクラス』:10点
マツダ『デミオ』:9点
スバル『レヴォーグ』:3点
BMW『i3』: 2点
ジープ『チェロキー』:1点
太田哲也|モータージャーナリスト・レーシングドライバー
1959年11月6日生まれ。自動車評論家、レーシングドライバー。4年連続でル・マン24時間レースにフェラーリで出場するなど日本一のフェラーリ遣いの異名を取ったプロフェッショナル・レーシングドライバー。現在は自動車評論家として多数の連載をもつ。