9月17日~19日までの3日間、東京ビッグサイトで行われたビジネストレードショー「EVEX(EV・PHV普及活用技術展)2014」。
同イベントのセミナー会場において、APEV(電気自動車普及委員会)は電気自動車(EV)の普及についてのシンポジウムを開催した。約250名もの事前聴講予約があり、セミナー会場は同シンポジウムの聴講に来た大勢の人の熱気に溢れていた。
講演に続くパネルディスカッションでは、「EVを普及させれために何をなすべきか?」というテーマで、鈴木高宏氏・有馬仁志氏・佐藤員暢氏・井原慶子氏による議論がおおなわれた。
◆EVを根本から見直そう・みんなで考えよう
「日本は技術力が高いということで、技術・経済・ビジネスが先行してしまい、EVを大きな枠組・大きな概念を考えるところができていないと個人的に思う。さまざまな環境に対応できる”パッケージング”を考えることについてまだまだ改善できるのではないか」とレーシングドライバーの井原氏は切り出した。
日本はEVの開発について世界をリードしていたが、国内で量産EVが発売された2009年以降、その爆発的な普及には至っていない。『リーフ』を販売する日産自動車は、2016年度末までにEVを累計で150万台販売する計画を掲げていたが、2013年末に同社のゴーンCEOはこの達成が2~3年遅れることを認めている 。
「EVをつくるところから廃車にするところまで大きなエネルギーが必要で、そのライフサイクルににかかるエネルギーをトータルで考えないといけない。またEVを構成するバッテリーなどの部品が環境に与える負荷についても考えないといけない。できるだけ再利用ができる素材を使用し、再生可能で持続可能な世界をつくっていくことが非常に重要」と話したのはdSPACE代表の有馬氏。
また有馬氏は、「(EVが普及するには)より大きな枠組みから変えていく必要がある。これまでは技術が先行していたが、もう一つ上のシステム全体から、全体の要求を考え、だからこの技術が必要なんだという風に落としこんでいかないといけない。”個別最適化”ではなく、協調した、一皮むけた連携やグランドデザインが必要」と強調した。
◆たくさんの人が移動の自由を享受できるように
カーシェアリングでもレンタカーでもディーラーの試乗車でも、まずはEVに乗ってその「楽しさ」や「気持ちよさ」を体感することが、その第一歩につながる。日本や世界の各地でおこなわれている超小型EVの実験にもあるように、環境に優しいEVは高齢者などの交通弱者が移動の自由を享受できる可能性が高い。パネルディスカッションの締めくくりでは、「たくさんの人が自由に移動できる方向にEVが進んでいけばと思う」と井原氏が語り、全体最適を目指すEV政策の重要性をを改めて確認して幕を閉じた。
EVというクルマはそれ単体だけでは完結せず、都市計画や交通政策、エネルギー需給問題などと密接に関わっている。そして今後は「ヒトとモノ」の考えが欠落した技術・経済・ビジネス先行のEVではなく、今後はヒトの「要求」から考えて生まれたEVやモビリティをつくっていく必要がある。われわれ一人ひとりが自分自身のこととして、モビリティやエネルギーについて、持続可能な社会の実現について考え、知恵を出し合っていくことが今後のEVの普及には不可欠だろう。