宇宙業界で女性が安心して働くには? 女性エンジニア・研究者が語る

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「女性が開く宇宙航空の夢と未来」講演会主催と登壇者のみなさん
  • 「女性が開く宇宙航空の夢と未来」講演会主催と登壇者のみなさん
  • 「きぼう」ロボットアーム開発の中心となったNECエキスパートエンジニア、大塚聡子さん
  • 国際機関での女性の就労について紹介した慶応義塾大学 青木節子教授
  • 宇宙ビジネスコンサルタント 大貫美鈴さん
  • JAXAシニアフェロー 川口淳一郎教授

9月11日、三菱みなと未来技術館にて開催されたJAXA 宇宙航空研究開発機構主催による講演会「女性が開く宇宙航空の夢と未来」では、宇宙開発の分野で働く女性5人が登壇し、女性を取り巻く就労環境について語った。

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」のロボットアーム開発を担当したNEC 宇宙システム事業部 エキスパートエンジニアの大塚聡子さんは、1980年代から2000年代にかけての宇宙業界での女性の待遇の変化について語った。大塚さんが1980年代半ばに宇宙業界への就職を志したところ、「うちでは女性のエンジニアは採用しない」といった言葉を投げかけられたこともあるという。しかし、あきらめずに人工衛星などの宇宙機を開発するメーカーに就職し、企業の合併などを経てNECでは「きぼう」ロボットアームの設計開発を担当した。

講演会を前に、大塚さんが周囲の女性にこれまで困ったこと、悩んだ経験の聞きとりを行ったところ、妊娠中に心ない言葉をかけられたり、女性だけ職場の清掃など時間外の仕事を担当しなくてはならなかったといった体験談が寄せられた。また、長期にわたるプロジェクト開始前に妊娠出産の予定を聞かれるなど、女性だけが受ける取り扱いに困惑させられた人もいた。

こうした扱いについて、大塚さんは「ある意味では”親心”として口にしているのかもしれない」とはしながらも、多くの女性が職場を去ることになり、自分は踏みとどまってきたからこそ「経験を語れる幸せ」があると述べた。とはいえ、あまりにも不当な取り扱いは過去のもので、現在では「宇宙開発は開発工程が明確で負荷がかかる時期の見通しは立てやすいはずだが、現実には長期にわたる高負荷が続く」といった環境に対する対策など、具体的な個別の問題に対処する段階に来ている。「明けない夜はない」というのが大塚さんの実感だ。

女性が宇宙に関連する職場で働くのであれば、国際機関に目を向けようと提案したのは、慶応義塾大学で宇宙法をなどを研究する青木節子教授。国連宇宙部を始め、国際機関での日本人の就労数は国別の望ましい数に足りておらず、女性が活躍できる余地は多いにあるという。外務省による就職支援なども利用でき、任期付き雇用から入って長く活躍している女性も多いとのことだ。ただし、学歴は非常に重視されるため、明日にも修士号取得に取り組むとよいという。

宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴さんは、1985年にアメリカで設立された航空宇宙業界の女性ネットワーク「Women In Aerospace(WIA)」の活動を紹介。スペース X社のグウェン・ショットウェル社長らも名を連ねるWIAでは、航空宇宙産業のリーダーへ女性を登用する取り組みやキャリア支援などを行っている。現在ではヨーロッパ、カナダ、アフリカにも各地域のWIAが設立されており、日本を中心にアジアでも設立に向けた準備が始まっているという。

講演会の最後には、小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトマネージャで現在はJAXAシニアフェローの川口淳一郎教授が登場。今持っている能力からできることをやる、だけではなく「不完全であることを怖れないこと。型をはみ出すくらいの、女性の臆することのない飛び出しも期待したい」と応援の言葉を述べた。

《秋山 文野》

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