【フィアット パンダ 試乗】 シングルクラッチのセッティングはこうでなくちゃ…中村孝仁

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マニュアルベースのセミオートマチックの数が増えてきた。そこで、元祖ともいうべきフィアットのデュアロジックを改めて試してみた。シングルクラッチ・セミオートマチックはこうでなくちゃ、と、改めて思わされた。

試乗車はフィアット『パンダ』である。同じパワートレーンを持つ『500』はすでに語りつくされた感があるが、正直パンダはまだまだ。現行車は3代目となるそうだが、基本的にボディは2代目の焼き直し。サイズは少し大きくなったようだが、依然として3655x1645x1550mmとコンパクトだ。

今回改めて取りあげたいのが、デュアロジックの名を持つシングルクラッチのセミオートマチックトランスミッションである。セミオートマチックとは、基本マニュアルミッションながら、オートマチックモードで走れる機能をもったトランスミッションを指す。このジャンルにはクラッチを一つ装備するものと二つ装備するものが存在し、前者には最近ではプジョー/シトロエン系のETGやVW『up!』に搭載されるASGなどがあり、後者の代表格はやはりVW『ゴルフ』などが搭載するDSGなどがある。スムーズネスという点ではクラッチを二つ装備する俗にDCTと呼ばれるデュアルクラッチに軍配が上がり、シフトの速さや繋がり感の良さではシングルクラッチは勝負にならない。

ではなぜ敢えてシングルクラッチなのか。最大の要素はコンパクトかつ軽量で安く作れることが大きい。特に価格帯の安いクルマではなかなかDCT採用は難しいのだ。それでもマニュアルをベースにオートマチック機能を有するトランスミッションが作れるから、大きな投資をせずにATを持てるわけで、メーカーとしてもお金のかかる本格的ATを作る必要がないというわけだ。この種のトランスミッションはほとんどヨーロッパに集中し、日本はその代りとしてCVTを採用するケースが多い。

フィアットは長年このシングルクラッチベースのトランスミッションを作り続けてきた。といってもフィアット本体よりも、アルファロメオのセレスピードや『フェラーリ』が採用したF1シフトといったフィアット以外のものの方が有名だ。それらはオートマチックモードを重視するというよりも、運転の楽しさを追求する要素の方が強く、当時のものはそれ故に少なからずシフトショックを伴ったものである。

ではこのデュアロジックはどうか。改めて乗ってみると、当然永年追求してきた運転の楽しさという点ではマニュアルモードで走る限り実に楽しい。そしてオートマチックモードはというと、トルクの大きな1速から2速へのシフトでは不可避的なトルク変動を感じるものの、そこから上はほとんど不満を感じないレベルに仕上げている。

この電子制御マニュアルは、通常のマニュアルトランスミッションに電子制御されるクラッチを組み込んだもので、クラッチペダルは存在せず、変速はドライバーがシフトレバーを動かしてマニュアル操作するか、もしくはクルマ任せで勝手にシフトするオートマチックモードを選ぶことが出来る。後者の場合ドライバーの意に反してシフトするケースがあるので、それが違和感として感じられてしまう。また、シフトの速さはメーカーのチューニングに委ねられていて、速い遅いによってそれがまたドライバーの違和感となって表れるケースも多い。今回1週間改めて試乗してみたが、このデュアロジックは価格を抑えて運転の楽しさを追求、同時に楽をしたい時はオートマチックモードで…という3要素が最もバランスよく盛り込まれたトランスミッションと思えた。

パンダの使い勝手の良さは今更ながらだが、このコンパクトな空間を目いっぱい使って機能的に仕上げている。もっともスタイリングに関しては初代の斬新さには及ばない。そして僅か875ccのツインエアの名を持つ2気筒エンジンも、想像をはるかに超えた性能を持つ。2気筒だからと馬鹿にしてはいけない。高速の追い越し車線をガンガン飛ばすことなど朝飯前だからだ。

パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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