【池原照雄の単眼複眼】トップメーカー日野がリードする大型車の安全装備普及

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日野自動車 大型トラックPCSの実演
  • 日野自動車 大型トラックPCSの実演
  • 日野自動車 ドラーバーモニターのカメラによる監視状況
  • 日野自動車 遠藤真取締役・専務役員
  • 日野・プロフィア(参考画像)
  • 日野・セレガ

乗用車に先行して義務化された衝突被害軽減ブレーキ

衝突被害軽減のブレーキシステムなど先進的な安全装備の普及は、日本では商用車も急速に進む展開となってきた。2013年11月に国土交通省が大型トラック・バス向けの安全装備の新基準を定めるとともに、装着の義務付けを決めたからだ。先週末の14日に普通トラック最大手の日野自動車が、同社の羽村工場(東京都羽村市)で実演を交えた安全技術の説明会を開き、商用車の新鋭技術群を体験することができた。

国交省の安全装備義務付けで、事故の抑止や事故時の被害軽減が高く期待されるのは、何といっても「衝突被害軽減ブレーキ」(以下PCS=プリクラッシュセーフティ=と表記)だ。大型トラックでは車両総重量22トン超クラスの義務付けがもっとも早く、新型車は14年11月(継続生産車は17年9月)からとなる。ただし、高速道路を運行しない車両は義務を負わない。

PCSは乗用車で「ぶつからないクルマ」などと謳われて普及が進んでいるが、まだ義務付けには至っていないし、その性能にも自動車メーカー間でばらつきがある。政府は、高速道路でひとたび大型商用車が事故を起こすと甚大な被害につながることから、システムの基準を定め、義務付けによる規制に乗り出した。

先行走行車との相対速度差50km/hまで衝突を回避

こうした動きにいち早く対応したのが日野で、14年4月に大型トラックの『プロフィア』(トラクターも含む)と大型観光バスの『セレガ』の改良に合わせ、トラック業界の先陣を切って標準装備にした。日野は大型車用のPCSについて06年に世界で初めて商品化した後、10年からは国内向け大型トラックと大型観光バスに標準装備し、これまでも安全装備普及の流れを主導してきた。

今回、国の新基準に適合させたPCSは、前方走行車両への衝突(追突)回避機能を新たに加えている。従来の日野の装置は衝突時の被害軽減を重視したシステムだった。新PCSは自車の走行速度が15km/h以上で、かつ先行車両との相対速度差が15km/h以上の時に警報や自動ブレーキが作動して衝突を回避するようになっている。

また、先行車両との相対速度差は50km/h以内まで衝突を回避できるので、作動範囲も広い(ただし、乗用車のシステムと同様に天候などの走行条件によっては衝突が回避できす「衝突被害軽減」となる場合もあるという)。今回の羽村工場内のテストコースでの実演では、乗用車をイメージした模擬車両を30km/hで牽引し、PCSを搭載した車両が80km/hと相対速度差50km/hで走行した。

ドライバーモニターなどを含む3点セットを標準装備

日野は今回の新型プロフィアとセレガでは、運転手の脇見や居眠りなどを感知して警報を発する「ドライバーモニター」および「車線逸脱警報装置」もそれぞれ性能を高め、PCS同様に標準装備にした。ドライバーモニターは運転手の顔を赤外線LEDによって照らし、太陽光が強い時、あるいは運転手がサングラスを着用した場合などでもカメラが眼や顔の向きを検知できるようにした。

車線逸脱警報装置も監視カメラや制御装置の性能を高め、車線から30cm以上逸脱すると警報が出るようにした。これも15年8月施行の国の新基準を先取りしている。また、ドライバーモニターによって警報が出された時はPCSも早期に自動ブレーキなどの警報を出すようシステム間の連携も図った。いわば3点セットの標準装備で大型車の安全性能を大きく引き上げているのだ。

日野の技術部門を担当する遠藤真取締役・専務役員は「トラック・バスは車両が大きいので万一事故が起きると社会的にも経済的にも影響は多大だ。われわれの製品への安全ニーズは極めて大きく、事故による死傷者ゼロという究極の安全社会の実現に向けて積極的に取り組みたい」と強調した。同社は1973年度から13年度まで、41年連続して国内の普通トラック(積載量4トン以上級)販売シェアのトップを維持している。同社が導く安全装備標準化の流れからは、社会的責務に対するトップメーカーとしての強い自覚が伝わってくる。

《池原照雄》

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