トヨタ紡織、北陸新幹線向けグランクラス用シートに見せたこだわり

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「人とくるまのテクノロジー展2014」トヨタ紡織ブースに出展された北陸新幹線グランクラス用シート
  • 「人とくるまのテクノロジー展2014」トヨタ紡織ブースに出展された北陸新幹線グランクラス用シート
  • グランクラス用シートの説明パネル
  • 後席に影響を与えずリクライニングができるシェル型を採用
  • シートの座面には通気性を考慮したメッシュが施されている
  • 電動シートの操作パネル
  • テーブルはフタを開けず直接引っ張り出す、ワンアクション動作
  • メインテーブルはアルミ製の折り畳み式。前後方向の幅がやや狭い
  • 肘掛けの袖に用意されたミニテーブルも折り畳み式だ

トヨタ車用シートの開発メーカーとして知られるトヨタ紡織。車載用以外では同社初となる北陸新幹線E7系・W7系に採用の「グランクラス」シートを出展した。今後は車載以外の事業として、航空機などへの進出も視野に開発を行っていく。

北陸新幹線は、上越新幹線の高崎駅から分岐して長野・北陸方面に伸びる新幹線。高崎~長野間が長野新幹線として既に開業しており、2015年春には長野~金沢間の延伸開業が予定されている。

この延伸開業に対応した車両として開発されたのが、JR東日本のE7系とJR西日本のW7系。東北新幹線のE5系と同様、グリーン車より格上の最上位クラス「グランクラス」が連結される。トヨタ紡織渉外広報部広報企画室の坂田誠室長によれば、このシートの開発にあたり、「車載で培ったノウハウを活かし、他社にはマネのできない様々な工夫を施した」と話す。本革シートの座面には無数の小さな穴を施しているが、これは車載シートで好評だった通気性を確保するためのもの。かつてのトヨタ・クラウンなどに採用されたファンこそ備えていないが、本革シートでありがちなベタつき感を解消するのに効果があるという。

シートはフル電動式で動作するが、このリクライニング機構にもこだわりがあった。リクライニング時は背面だけが倒れるのではなく、ロッキングチェア風に座面も一体で傾くため、シャツなどが引っ張られたりしないのだ。つまり、シートを倒した後に立ち上がってもシャツの身繕いをしなくても済むってワケだ。

テーブルにも様々な工夫が施されている。従来は蓋を開いてから引っ張り出す方式が一般的だったが、ワンアクションで引っ張り出せるタイプを採用。引っ張り出すときは軽いテンションがかかり、テーブルのセットアップまでスムーズに行える。年配者が使っても楽にテーブルが使えるようにする配慮から採用したのだという。テーブル自体も質感あふれるアルミ素材で触感も上々だった。

また、見逃せないと思ったのは左側の袖にあるアルミ製ミニテーブル。一見すると単なるドリンク用にしか見えないが、実はこれが折り畳み式となっていて、ドリンク以外にも手帳やスマホ等を置くのに重宝しそうな造りになっていた。

読書灯、これもアルミ鍛造で作られたLEDライトを採用。角度の可動範囲がイマイチ狭い気もしたが、手許を照らすことを重視して決められたようだ。

シート全体はシートを倒しても後席に迷惑がかからないシェル型。シェルの端につかまれば、前席に座っている人に不快な思いをさせずに通路まで出られるのもこのタイプの良いところ。欲を言えば、専用グリップがあればもっと楽に出られるようになるのではないかと思った。

北陸新幹線でのグランクラスは来春の延伸開業まで待たなければならないが、E7系は今年3年から長野新幹線の「あさま」に先行投入されている。専任アテンダントによるサービスはないものの、E7系を選んで乗車すればシートだけは体感できる。トヨタ紡織の坂田室長は「これを実績として他の新幹線や航空機などへの参入も積極的に進めていきたい」と話していた。

《会田肇》

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