【池原照雄の単眼複眼】高配当・割安なのに自動車株は人気薄

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日産自動車本社
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  • 富士重工業の吉永泰之社長

乗用車8社すべてが復・増配

乗用車メーカー8社の2014年3期連結営業利益は全社で増益となり、ホンダと日産自動車を除く6社が最高益を更新した。8社合計の営業利益は4兆5071億円と、最高だったリーマン・ショック直前の08年3月期(4兆5500億円)には及ばないものの、ほぼピーク時まで回復した。その割に今ひとつ冴えないのが各社の株価だ。配当利回りでは3%を超える企業もあり、お買い得感が高いと思われるのだが…。

8社の業績は今期(15年3月期)もホンダ、日産、ダイハツ工業を除く5社が営業利益で引き続き最高更新の予想となっている。その利益総額は4兆6080億円(前期比2%増)であり、8社ベースでは7期ぶりに最高益を更新する。好業績を背景に各社は株主還元にも積極的で、前期はマツダと三菱自動車工業が復配するとともに、他の6社はいずれも増配を実施した。

営業利益、純利益とも6期ぶりに最高を塗り替えたトヨタ自動車は、通期配当を75円増配の165円とした。これも最高だった08年3月期の140円を大幅に上回る過去最高額。トヨタは配当と並ぶ株主還元策である自己株取得も、6月の株主総会後に行う予定だ。発行済み株式の1.7%に相当する6000万株を取得し、うち3000万株を消却する。

◆PBRは低く、配当利回りは高い

以下の表は、8社の先週末(5月30日)の株価の終値と、それを元に算出した「PBR」(株価純資産倍率)と今期配当予想による「配当利回り」である。


※株価は5月30日終値。PBRはその株価で算出、配当利回りは各社の今期配当予想から算出(トヨタ、ダイハツは未定のため前期配当実績で算出)。

PBRは株価が1株当たりの純資産の何倍になっているかを示す。仮に会社を解散することになった際、PBRが「1倍」だと株主には株価と同じ額を返却できるという見方ができるので「解散価値」の指標となる。同時に、企業の成長や株価の上昇期待などを反映する指標ともされている。たとえば14年3月期の連結営業利益が初めて1兆円に達したソフトバンクの現在のPBRは4.5倍程度となっている。

それに比して自動車8社のPBRは総じて低位だ。収益、配当とも最高になった企業が続出するなかで、トヨタですら1.37倍。2倍を超えているのは、自動車業界で世界トップ級の売上高営業利益率(前期=13.6%)をあげた富士重工業(スバル)の2.75倍のみだ。日産は0.95倍と、株価は「解散価値」を下回るレベルで低迷している。

◆「市場の評価」に真摯に向き合うことも

一方で各社の配当利回りは、復配したばかりのマツダなどを除けば、総じて高水準にある。日産とダイハツは3%台に乗っている。これも株価が低迷すれば高くなるので、日産は業界トップの3.59%に達している。今年から始まったNISA(少額投資非課税制度)で100万円を日産株に投資すれば、税金はかからないので年3万5900円が配当として受け取れる勘定だ。

もちろん、株式投資には元本の目減り(=株価下落)というリスクはある。一方、ローリスク商品では、国内金融機関の定期預金で最も金利が高いのはネットバンクの年0.2%水準。100万円を預けて金利は2000円(課税前)でしかない。

何やら自動車株投資の推奨のようになってきたようでもあるが、個人的にはそれほど割安感を実感している。もっとも、企業側としてはPBRなどの指標に示される「市場の評価」に真摯に向き合う必要がある。日産に次いでPBRが低いのはホンダの1.09倍だが、この2社は今期(15年3月期)も営業利益が、過去最高を更新する予想とはなっていない。高レベルの配当の割には今後の「期待度」に厳しい評価が下されているのだ。

《池原照雄》

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