【ダイハツ タント & DAYZ ルークス 300km 試乗】高速道路からワインディングへ、走りと燃費は?

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ダイハツ タント カスタム RS
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  • 日産 DAYZ ルークスハイウェイスター ターボ
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モアスペース軽の元祖とも呼べるダイハツのタントと、ニューフェイスの日産「DAYZ ルークス」の2台を、一気に300kmを走破するツーリングに持ち出した。借り出したのはタントが「カスタム RS “SA”」とDAYZ ルークスは「ハイウェイスター ターボ」。どちらもターボエンジンを搭載するシリーズでもトップグレードに相当するモデルだ。

巡航時と加速時で両車に差が出る

まずは高速走行からレポートしよう。こうした背の高いクルマは空気抵抗が大きく、横風にも不利だ。そのため、高速走行の安定感や静粛性では、もともと条件が悪い。折しも取材日は西向きの強風が吹き荒れ、少々厳しいコンディションでもあった。しかし、厳しい競争の中に生まれた2台は、そんな不利な面を感じさせない走りを見せた。合流車線から本線への合流も、十分な力感の加速で、不安なくこなす。2台ともエンジンは3気筒のDOHCターボで、最高出力も47kW(64馬力)と数字を揃える。ターボは低回転からスムーズに効き始め、リッタカー以上にも感じるトルクフルなフィーリングも同じだ。さらに、どちらもCVTということもあり、加速感も似たようなものであった。

高速道路での巡航は、2台とも背の高さを忘れるほどの直進性が確保されており、一頃の軽自動車を想像すると隔世の感がある。普段、高速道路を走り慣れていないドライバーでも不安はないだろう。

動力性能では互角という印象の両車だが、静粛性ではシチュエーションによって差が出た。法定速度での巡航は副変速機付きCVTを採用するDAYZ ルークスが有利。100km/hでのエンジン回転が2000回転を少し上回る程度のDAYZ ルークスに対して、タントは3000回転弱。そのエンジン回転数の差が静粛性の違いになった形だ。カタログなどを見ても特に静粛性を謳っているわけではないのだが、なかなかの実力といえる。しかし高速走行時にキックダウンするなど加速の場面では、DAYZ ルークスはかなり勇ましいエンジン音をたてる。一方で、タントはそれほど大きくノイズが高まらないのは美点。最大トルク値はDAYZ ルークスが10.0kgm、タントが9.4kgmと若干差があるが、体感的にはほとんど変わらず、ロードノイズや風切り音についても両車大差はない。

◆街乗りではアイドリングストップの有無が評価の分かれ道

2台で向かった先は、房総半島の北端となる銚子だ。東関東道を長躯して、SAの車両乗換をこなしながら3時間ほどで太平洋を望む犬吠埼に到着、そこから九十九里浜沿いに南下した。

撮影ポイントを探しながらの街乗りは、信号によるゴー&ストップの繰り返し。こういうシチュエーションでは、アイドリングストップが生きる。信号待ちの一瞬だけでも無駄な振動がないことで快適度はアップ。また、渋滞内走行での万一を防止する「衝突被害軽減自動ブレーキ」も、前車が急ブレーキを踏んで車間が狭まった時などにアラートを発して安心感を高めてくれた。しかしながら、その両方がDAYZ ルークスに用意されていないのは残念。街乗りでは、アイドリングストップと「衝突被害軽減自動ブレーキ」(タントでは「スマートアシスト」と呼ぶ)の両方を装備するタントが、安心感や快適性という意味で好印象を得た。

◆ワインディングでも、意外といける

九十九里ビーチラインを経て、長生から国道128号から国道408号に入り西を目指す。千葉の房総半島の真ん中あたりは、意外と山がちで、クネクネと狭い道が続く。子育てファミリーをターゲットとしたスーパーハイトワゴンは、本来的に、そうした道を得意とするクルマではない。しかし、いざワンディングに持ち込んでみると、予想外にもよく走る。

ワンボックスタイプの軽自動車で感じるような倒れ込むような不安なロール感が少なく、コーナーで安定している。もちろん、飛ばして楽しいわけでもないし、速いわけでもない。しかし、2台ともに、狙ったとおりのラインで安心して曲がれる。背が高く、ファミリー向けだからと侮ってはいけないということだ。ちなみにステアリングの操舵感は、しっとりとしたステアフィールが気持ちいいDAYZルークス、重めにしつらえたパワステフィールで安定感のあるタントという対比。ワインディングでは、やや軽く曖昧さを残すDAYZ ルークスよりも、タントの方が安心感がある。

高速ステージから市街地、曲がりくねった山道までの300kmを1日かけて走り通した。総論としては、タントもDAYZ ルークスの2台とも、ストレスなく気持ち良く走り終えることができた。

本来、背をめいっぱい背を高くしたスーパーハイトワゴンは、コーナリング時の操舵で乗員が不安感を感じないようにするためロール剛性を高める必要がある。その結果、足を固めざるをえなくなりアンダーステアも強まるのだが、それでも乗り心地への悪影響はミニマム。ほとんど気にならないレベルだ。また、ターボエンジンとCVTを組み合わせたパワートレインは、十分なパワーと上質な滑らかさを実現。「軽自動車だから我慢」という考えを過去のものにしていた。

今回は高速5割、ワインディング2割、一般道3割という比率で丸一日300kmあまりを走った。特にワインディングではかなり元気良く走らせた結果、メーター内の燃費計表示はタントが17.8km/リットル、DAYZ ルークスで16.7km/リットル。同条件・同行程で走らせたが、一般道でのアイドリングストップの有無がこの数値に多少の影響を与えたことは否めない。都市部での使用が中心ならばタントが有利になるだろう。ともあれ、いずれも燃料タンクは30リットルの容量を持つのでフルタンクでの航続距離は500kmを超える。競争の厳しい人気ジャンルだからこそ、クルマのクオリティが高まり、その結果さらに人気が高まるという、正のスパイラルに入っているのだろう。

《鈴木ケンイチ》

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