【日産 エクストレイル 試乗】ポジションキープしながらも快適な乗り心地に…家村浩明

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日産・エクストレイル
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これもクロスオーバーだなと勝手に思い込んで試乗会場に向かったが、しかし、新型『エクストレイル』資料のどこにも、そんなことは書いてなかった。このクルマはあくまで、メーカーの言を借りれば「進化し続ける本格SUV」として企画されたクルマ。

なるほど、こういう“クロスオーバー時代”(私はそう思っている)に、逆に、そっち方向には目もくれず、シンプルにSUVを考えて仕立てるのは、むしろ一つの戦略であるかもしれない。また、そもそもニッサンには、『ジューク』というクロスオーバーすら跳び越えてしまった新提案が既にあった。それに気づけば、エクストレイルのポジションキープは当然ということになる。

ただ、そうであっても新型は、やはり時代の影響は受けている。サイドビューに盛り込まれた“うねり”のような微妙なラインやDピラー付近の処理など、SUVとはいえ、単に四角いだけのクルマにはしないぞ…という意図が見える。一方で、ルーフエンドからテールにかけては、絶対にクーペ的にはしないという一線が引いてある感じで、もともとSUVを志向するカスタマーには、このくらいの“保守性”が逆に好まれそうだ。

そしてテールゲートには、キーを持っていれば、あるポイントに手などを差し出してセンサーを遮ると、それを検知してリヤゲートが開く機能が新装された(オプション)。

市街地に走り出してみると、その特有の乗り心地に、まずは驚く。この粘っこい感覚はいったい何だ?…という感じ。柔らかく足が動いて乗り心地がマイルドだというのではなく、そうした動きは割りと固められているのに、乗り心地に硬い感覚がない。ムリヤリにたとえると、何かの液体を入れた硬い風船(フワフワではない)が、四つの車輪とドライバーの間にあるというような感じか。サスはそんなに動かない、むしろ固めてあるのに、時速にして60km/h以下の低速域での快適性(さらにいうなら積極的な気持ちよさ!)が十分以上に確保されている。

SUVとは事実上新種の乗用車であり、市街地も含んで日常的に使うものであるとすれば、こういうセットアップは正解。カスタマーとしても大歓迎であろう。

そして、そんな乗り心地を補強しているのがシート。身体に密着感があり、かつ、どこか特定の部位に負担がかからない(痛くなったりしない)という点で、よく研究された形状になっている。聞けば、このエクストレイルはニッサン新世代のシートを搭載した初号機だそうで、基本形状と方向性は大いにグッドであり、今後のニッサン車全体のシートについても注目していきたいと思う。現状では、肩のあたりをやや“支えすぎる”という印象もあり、とくにドライバー席においては、肩の動きをシートに邪魔されず、もう少しフリーにしたいという思いはあるが。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

家村浩明|ライター&自動車ジャーナリスト
1947年、長崎生まれ。クルマは“時代を映す鏡”として興味深いというのが持論で、歴史や新型車、モータースポーツとその関心は広い。市販車では、近年の「パッケージング」の変化に大いに注目。日本メーカーが日常使用のための自動車について、そのカタチ、人とクルマの関わりや“接触面”を新しくして、世界に提案していると捉えている。著書に『最速GT-R物語』『プリウスという夢』『ル・マンへ……』など。

《家村浩明》

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