山口大学の杉山氏を中心とした研究グループは、国立天文台のVERAを含むJVN(Japan VLBI Network)を使って、大質量星形成領域Cep-Aにある電波源HW2のメタノールメーザー観測を実施して、固有運動を測定した。
測定の結果、電波源の周囲のガスが、回転しながら少しずつ中心に落ちていく様子をとらえることに成功した。
Cep-A は、地球から約700pc(=2230光年)の距離にある大質量星形成領域で、電波源HW2は、Cep-Aに存在する、若い大質量星のひとつ。研究グループでは、2006~2008年にかけ、3回にわたってCep-A HW2のモニタリング観測を行った。29のメタノールメーザースポットを観測した結果、測定した固有運動は秒速0.2~7.4km(平均は秒速3.1km)、回転および落下速度はそれぞれ0.5プラス・マイナス0.7kmと1.8プラス・マイナス0.7kmだった。これらの動きは、電波源HW2を中心とした半径680AU(1AU=太陽と地球間の平均距離)の周囲を回転しながら落下している可能性を示唆している。
太陽の10倍ほどもある大質量星は、仮説として星同士がぶつかって合体していくモデルや、星の周りのガスが回転しながら落ちて(集まって)いくことにより大きくなるモデルが考えられている。今回の観測結果は、後者を支持する結果になっており、大質量星が生まれるメカニズムを解明する手がかりになることが期待される。