メルセデスの新型『Sクラス』を見ると、変化の幅が小さいように見えるかもしれない。デザインはキープコンセプトだし、パワートレーンは改良を受けているものキャリーオーバーだからだ。しかしその中身は大きく変わっている。世界の最先端を行くインテリジェントドライブや快適性の高さ、徹底した効率の向上などが図られているからだ。外観デザインはなだらかなルーフラインを採用して流麗さを強めるとともに、これまでと同様のクラシカルなベンツ顔が維持された。最近のベンツ車が次々にアバンギャルド顔になるのに閉口していた私には大歓迎である。インテリアの仕上がりは素晴らしいの一言だ。試乗したS550には、シェールグレーの内装色にオプション設定のメタライズド・アッシュウッド・インテリアトリムが装着されていて、きらきらした宝石箱の中にいるかのような感覚を覚えた。ベントレーを思わせるようなラグジュアリーな内装が現代的な味付けのもとになされている。装備に関してもホットストーンによるマッサージ機能を備えるなど、メルセデスベンツとは思えないような快適性の追求がなされている。追従走行や先進緊急ブレーキなどをセットにした“レーダーセーフティパッケージ”による安全性の高さも群を抜いている。自動ブレーキは日本のメーカーが早くから取り組んできたが、Eクラス以降の最新のメルセデス・ベンツは日本車を一気に追い越す性能を備えた。同時に安全装備用のセンサーによってクルマの周囲が良く見える状況になったことで、一歩進んだ自動運転も可能になった。実際、ドイツでは、125年前にカール・ベンツ夫人が最初に長距離ドライブした100kmほどのコース(ベルタ・ベンツ・メモリアル・ルート)で自動運転の実験を成功させている。S550ロングに搭載されるV型8気筒4.7リットルのツインターボ仕様エンジンは、効率の向上が図られ、335kW/700Nmのパワー&トルクを発生すると同時に、10.1km/リットルの低燃費を達成している。滑らかに気持ち良く吹き上がるエンジンで、一気に回転が上昇していくのに合わせて豪快な加速が伸びていく。正に高級車にふさわしい余裕にあふれたエンジンである。試乗車は19インチタイヤ仕様のAMGスポーツパッケージ装着車だったが、乗り心地の快適性は損なわれていなかった。自動ブレーキ用のカメラを使って前方の道路の段差を判断し、それに合わせてサスペンションの減衰力を変化させる“マジックボディコントロール”が装備されていたことも貢献していたと思う。この機能は1台のクルマを走らせただけでは分かりにくいが、テストコース内の段差を設定した路面でオン/オフを切り替えて走らせると、その機能をしっかり確認できた。カメラを使うため晴天の昼間に限られるが、乗り心地の向上に効果のある装備だ。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
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