『アクセラ』のパワーユニット3種、さらにはATとMTを乗り比べて感じたのは、それぞれに魅力を感じる一方で、乗り味の違いが明確だったことだ。開発主査の猿渡氏にアクセラの本質はどこにあるのか聞いてみた。
「我々の目指していた走りを再現したのは、1.5リットルモデルです。ハンドリングは、より人間の感覚に近付けました。先代のアクセラではもっとステアリングに対しクルマが敏感に反応するハンドリングにしていましたが、長距離を走るような使い方では疲れてしまうこともあります。そこで新型アクセラではステアリングを切っただけ曲がる、より自然なハンドリングを追求しました。最初に運転した時にはスポーティさを感じにくいかも知れませんが、じっくりと走り込むことでクルマとの一体感を感じていただけると思っています」。
なるほどあの「15S」「15C」の走りの楽しさこそアクセラの本質だったのか。ということは、2リットルやハイブリッド、ディーゼルというバリエーションモデルは、さらに目的に応じてユーザーが選択できるパフォーマンスの余裕と考えていい。
ところでハイブリッドについては、せっかくスカイアクティブの2リットルエンジンと組み合わせるのなら、もっと強力な加速力を実現しても良かったのではないだろうか。やはり燃費のために速さを犠牲にしたのだろうか。
「いいえ、燃費はそれほど重視していませんでした。実はハイブリッドはTHSのギアユニットにトルクのキャパシティの限界があるので、あまりパワーを上げられないんです。そこでコールドEGRをより多く取り入れることで、出力を抑えながらポンピングロスも抑えています」。
スペックを見てみると、なんとハイブリッド用の2リットルエンジンは、アクセラの1.5リットルよりパワーもトルクも控えめなのである。圧縮比14でもパワーが控えめなのは、EGRを多くしているせいだった。それでも2リットルエンジンを採用したのは低速トルクを重視したからだろう。そう考えるとハイブリッドの走りを洗練させるのは、想像以上に開発が大変だったことが分かる。
ではバッテリーにリチウムイオンを使わず、ニッケル水素を使ったのはコスト面からのチョイスなのだろうか。
「バッテリーは性能面でもニッケル水素で十分だと考えています。満充電になると、それ以上発電するとバッテリーが傷むので、実は走行中に廃電していることもあるんですよ」。
廃電というのは低負荷時、あえてエンジンを抵抗にしてモーターで電力を消費するらしい。ちょっと勿体ない気もするが、バッテリー容量を増やせばさらに重くなるし、バッテリーが傷むよりはベターな選択だろう。
そう言えば、アクセラ・ハイブリッドは回生と協調しながらも市街地でのブレーキフィールがかなり自然なのも素晴らしい。このあたりのフィールをハイブリッドだからと手を抜いていないあたりも、マツダらしさを感じさせた。
最後に猿渡主査から、1月に発売になるディーゼルについて、気になる情報を教えてもらった。
「アクセラのディーゼルは、欧州では税金の問題もあって出力を抑えているんです。ですから175ps/42.8kgmのフルパワー仕様を味わえるのは日本だけなんですよ」。
すでにディーゼルを予約、あるいは待ち構えている人にとって、これは嬉しい情報だ。