【インタビュー】ボルボをプレミアムの高みへ…インテリアデザインディレクター

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ボルボ・カー・コーポレーション、インテリアデザインディレクターのロビン・ペイジ氏
  • ボルボ・カー・コーポレーション、インテリアデザインディレクターのロビン・ペイジ氏
  • ボルボ・コンセプトクーペ(東京モーターショー13)
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  • 東京モーターショー13 ボルボ コンセプトクーペ
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  • 東京モーターショー13 ボルボ コンセプトクーペ
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ボルボ・カー・コーポレーション、インテリアデザインディレクターのロビン・ペイジ氏は、17年間に渡り、ベントレーのインテリアデザイナーを務め、近年ではコンチネンタルGTのインテリアなどを担当。その彼が2013年にボルボへ移籍。イギリスとスウェーデンのデザインの違から、今後のボルボのインテリアデザインをどのように変えていきたいかなどの話を聞いた。

イギリスからスウェーデンへ

----:ベントレー時代、イギリスの職人気質、クラフトマンシップをとても大事にしてデザインをされていました。そこから、スウェーデンのボルボ社に移ったのですが、スウェーデンに来てみて、イギリスとスウェーデンの違いをどのように感じていますか。

ペイジ氏:実は、イギリスのクラフトマンシップ、職人気質とスカンジナビアのクラフトマンシップは非常に似たところがあり、繋がっているのではないかと感じたくらいです。スウェーデンのデザインは、非常にシンプルかつ、賢明なアプローチで、最終的なデザインを仕上げていく。そういった職人気質のデザインというのは、世界中から尊敬を集めており、非常にイギリスのクラフトマンシップと似たところがあるなということを感じました。

----:では、イギリス人のロビン・ペイジさんから見て、スカンジナビアンデザインとはどういうものなのでしょう。

ペイジ氏:私がスウェーデンに行く前に考えていたスカンジナビアンデザインは、家具であるとか、デンマークのロイヤルコペンハーゲンの陶磁器の形などの、プロダクトデザインがスカンジナビアンデザインだと思っていました。しかし、実際に移り住んでみると、そのイメージがかなり変わったのです。

スカンジナビアンデザインというのは、ライフスタイル全体と関わっているものだということが分かったのです。北欧ならではの陽の光や、ナチュラル素材。そして、自然といつも一緒にライフスタイルを楽しんでいる。つまり、クオリティオブライフが非常に高のです。

クルマに対するアプローチも、ドライビングパフォーマンスがどうというところよりも、自分の生活の一部としてクルマを自然と共に捉えて考え、感じることがスカンジナビアンデザインだと思いました。

今回のコンセプトクーペにおいても、自然の光の取り入り方もそうですし、例えば、インテリアの素材として使っている、スウェーデン製のクリスタルのギアシフトや、ヨーデポリの地元から調達した、カーペット素材を使っています。また、滑らかな革も全部自分たちの周りの自然の素材を使いうことで、スカンジナビアンデザインを表しているのです。

----:革の使い方のお話が出たのですが、ベントレーはふんだんに最高級の革を使っています。しかし、ボルボは上級モデルからそうでないモデルまで様々です。ボルボに移られて、そのギャップをどのように消化してデザインに反映していったのでしょうか。

ペイジ氏:ベントレーは、最高級の素材だけを使い、それも非常にディテールにまでこだわって手作業ができる価格帯のクルマしかありませんが、ボルボは、ハイスペックからロースペックまでいろいろです。ハイスペックのほうは高級素材を使えますが、ロースペックになると、またちょっと違った形や素材を使いながらも、どう表現するかということが面白いのです。

革は、自然の素材なので、スカンジナビアンデザインにも関係してきます。自然な仕上がり感と、賢く頭を使ってシンプルにデザインされたアーキテクチャーとの融合が、スカンジナビアンデザインだと思うのです。

コンセプトクーペにおいても、きれいでシンプルな構造に、これまでのスカンジナビアンデザインといわれている自然の素材である、美しい革などを使ったディテールを取り入れていくことによって、シンプルなアーキテクチャーと詳細のディテールにまでこだわった質の高さを、これから私は発揮していこうと思っています。

コンセプトクーペのインテリアデザイン…スウェーデンの海岸線をイメージ

----:では、コンセプトクーペの具体的なインテリアデザインの特徴を教えてください。

ペイジ氏:まずほとんどの操作がセンタークラスターのタッチスクリーンで操作できます。他のメーカーではローターや、様々なボタンで操作しますが、我々は将来的にそういうものは全部無いすっきりした形にしていきます。しかも、運転に集中しながら直感的に、安全に全部オペレートできるようにするという、大胆な一歩をボルボだけが踏み出しているのです。

また、先ほど申したように、シフトノブはスウェーデンのクリスタルガラスです。最先端の技術を搭載しつつも、美しいものも揃えているのです。

実はグレーとブルーのインテリアカラーにも意味があります。私が住んでいるのはスウェーデンの海岸線の近くなのですが、その海岸線がこの色合いなのです。そして、インパネから左右ドアトリムに流れていく薄いグレーのようなウッド部分、これは流木おイメージしています。つまり、その砂浜に波や風にさらされた形で打ち上げられた、その流木の色合いを表しています。だから、これはスウェーデンの海岸沿いなのです。

因みにシートベルトのバックルに、SINCE1959と書いてあります。世界に対してボルボが初めて安全機構として3点式シートベルトを導入したのが、その1959年なので、表記しました。

そのシートは、1960年代のスウェーデンの家具のメーカーが作った、揺りかごのような形の椅子をイメージしたデザインです。外側が硬いシェルで、中が非常に軟らかい、つまり、外側でスポーティさを表現しながら、内側の素晴らしい上質の革でエレガントさを出しているのです。

そして、室内全体にルーフから光が入ってくることでスカンジナビアのライフスタイルを表現しました。本当にその空気の中に解けこんだような、そういった光の中にいるという雰囲気なのです。

コンセプトクーペのインテリアデザイン…フローティングデザインを採用しなかった3つの理由

----:ボルボは、センタークラスターにフローティングデザインをデザインしてきましたが、コンセプトクーペでは違いますね。

ペイジ氏:はい。センターコンソール部分に“ポコン”と入れたようなデザインは嫌だと思ったのです。そこで、わざとそういう形にはならないようにしました。ただし、軽いイメージを持たせるためにサイドから見ると三角形の断面が入っています。

今回フローティングデザインを採用しなかった理由は大きく3つあります。まず、トーマス(ボルボデザイン担当上級副社長のトーマス・インゲンラート氏)が、ベントレーから移った私に期待しているのは、いままでとはまた違ったボルボのデザインランゲージを明確に表し、使っていくことです。

2つ目は、私たちのヘリテージのひとつであるP1800から受け継いできた資産を表すということです。そこでメーター周りや、ハンドル周りなどを、P1800を彷彿とさせる形にして、ヘリテージを表しています。

3つ目は、このコンセプトカーを作った重要なポイントです。私たちが新しく導入したSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテイクチャ)と呼ばれているこのプラットフォームを使うと、コンセプトクーぺのような2+2だけではなく、XC90のようなサイズの大きなクルマまですべて対応が可能となります。その共通のモチーフとして、このセンターコンソール周りなどが採用できるのです。そして、このSPAのお披露目としてコンセプトクーペを作ったのです。

----:コンセプトクーペがSPAのお披露目ということであるなら、今後、このデザインモチーフがXC90などに使われていくということですか。

ペイジ氏:そうです。センターコンソールのタッチスクリーンはXC90に入ります。そのほかギアレバー周りなどのモチーフも取り入れられるでしょう。

----:最近ボルボは、コンセプトクーペを含めて、P1800をデザインモチーフにしています。ボルボはアマゾンをはじめ様々なクルマがありますが、なぜあえてボルボP1800なのでしょうか。

ペイジ氏:単なる現実的なものではなく、胸躍るワクワクするような、エモーショナルな部分が、P1800にありましたので、選んだのです。

ベントレーコンチネンタルGTで新しいジェネレーションが始まったことと似ています。2プラス2のスポーツカーで、エモーショナルな、胸躍るような感覚が得られるというところは同じです。その後4ドアのフライングスパーが出て来るように、ボルボも同じようなアプローチになると思います。

----:ということは、ベントレーで新しい世代に進化をさせていったのと同じように、ボルボとしてもインテリアのデザインを新しい時代に進化させていくことが、ペイジさんの役目なわけですね。

ペイジ氏:そうですね。ちょっとプレッシャーはありますが、ボルボとしてプレミアムレベルにもっと引き上げたいということで、私に白羽の矢が立ったということだと思います。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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