【トヨタ クラウン マジェスタ 試乗】トヨタブランドがこれで良いのか…松下宏

試乗記 国産車

トヨタのフラッグシップである『マジェスタ』は、過去2代のモデルで『クラウン』から独立する方向に進んでいるかと思ったら、今回の6代目モデルは改めてクラウンシリーズの一員であることが明確にされた。というか、単にクラウンのバリエーションのひとつになってしまった。

外観デザインを見た感じはまるでクラウンロイヤルのようだ。ロイヤルと同じ形状のフロントグリルやテールランプを持つから、普通の人には見分けがつかないくらいである。良く見れば、グリル内のバーに縦横の違いがあることなどに気づくが、見た目はロイヤルである。

インテリア回りはロイヤルに対してより高い質感が確保されているものの、基本造形はクラウンと共通である。マジェスタらしさがはっきり分かるのは後席に座ったときで、クラウンに対して75mm長い(旧型マジェスタと同じ)ホイールベースによって、大人がゆったりと足を組める空間が広がっている。

中でも後席重視仕様のFパッケージでは電動リクライニングシートなどによって快適な室内空間が作られていて、相当に良くできているという印象だった。

新型マジェスタではV型8気筒エンジン搭載車が廃止され、全車ともV型6気筒3.5リットルエンジン+電気モーターのハイブリッド車になった。基本的に『GS450h』や旧型クラウンのハイブリッドに搭載されていたのと同じシステムで、トータルで252kWの動力性能を発生する。

走りに関してはまあ満足できる。発進は電気モーターだけで走り出し、低速域ではスムーズそのものといった感じの走りを示す。アクセルを踏み込んだときのパワーフィールも上々だ。全体としては従来のV8搭載車を上回る動力性能といった印象である。

新型マジェスタの車両重量は1800kgを超えるが、その重さを苦にしないだけの性能であり、急な上り坂が続く峠越えを道での試乗でも、余裕を感じさせる走りの性能を見せた。

静粛性はクラウンのハイブリッド車を上回る。クラウンでは4気筒エンジンのハイブリッドであるため、V型6気筒エンジンを搭載するマジェスタの方がより静かだ。ただ、モーター走行からエンジンが始動したときにははっきり分かるし、従来のV8搭載車に比べてどうかというと微妙だ。

乗り心地の良さは満足できるものだった。今回からエアサスではなくメカサスに仕様ダウンしているので、従来のモデルに比べると物足りなさを感じる面もあるが、マジェスタならではの快適な足回りチューンに加え、クラウンに比べて長いホイールベースが乗り心地に貢献している。

高級車であるだけに、装備の充実度が高いのは当然のことだが、今回のマジェスタでは安全装備のプリクラッシュ・セーフティシステムが仕様ダウンした。

旧型ではミリ波レーダーとステレオカメラを組み合わせて人間も認識できる方式だったのに、新型では単純なミリ波レーダー方式になり、人間を認識できなくなった。しかもFパッケージには標準だが、マジェスタにはオプション設定なのだから、これは何とも物足りない。

それなりに良くできたクルマであるものの、『LS』と同じV型8気筒からGSと同じV型6気筒のハイブリッドに代わり、エアサスや高度なプリクラッシュ・セーフティシステムがなくなるなど、いろいろな意味で比べて格下げされた印象が強いのが今回のマジェスタだ。

前のモデルから乗り換えた人ががっかりする面があると思う。このようなクルマにしてしまうのなら、あえて作り続ける意味があるかどうか。トヨタブランドはこれで良いのかと思った。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★


松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。
《松下宏》

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