3代目となった『X5』は、明らかに「コンサバ狙い」である事が鮮明だ。ボディサイズは殆ど変わっていないし、エクステリアのデザインも人によっては“代わり映えがしない”とそんな表現となりそう。
そのあたりを開発陣に問うと「X5に相応しいパッケージングは、すでに先代モデルが確立させていた」という回答が返って来た。聞けば、昨今では世界のBMW車の約3分の1が「Xシリーズ」で売れているという。中でもその“軸足”であるX5の変わり様を控えめに抑えたのは、現時点での模範解という判断なのかも知れない。
カナダで開催された国際試乗会で乗ったのは、ツインターボ付きの4.4リッターV8エンジンを積んだ「50i」と、ターボ付き3リッター直6ディーゼルを積んだ「30d」。後者はこれまでと同様、“35d”と名前を変えて日本でも発売されるはずだ。
当座のフラッグシップ・グレードである50iで走り始めると、その第一印象は「“こうしたカタチ”の7シリーズのようだナ」というものだった。従来型に対する狙いどころが「コンフォート性能を大幅に引き上げる事」という開発陣のコメント通り、静粛性や加速のスムーズさは文句ナシ。アクセル操作に対してやや強い“飛び出し感”があるのが多少気になるが、8速ATがキビキビとMTライクな変速を繰り返すのにショックが全く無い事に驚かされる。
こうしたモデルにも関わらずランフラット・タイヤを履くが、それを殆ど完璧に履きこなしてしなやかさが際立つ点にも感心した。なるほど確かに、このモデルは『7シリーズ』と並ぶ、「BMW車ラインナップのひとつの頂点」に立つ事を教えられるのだ。
比べれば、30dがややノイジーで時にエンジン振動がステアリングに伝わるなど、「やや格下」感があるのは否定出来ない。しかし、街乗りをはじめとした日常シーンでの、ディーゼル・エンジンゆえの力強いトルク感は、それはそれでやはり捨て難いものがあるのもまた確かだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
河村康彦|モータージャーナリスト
自動車専門誌編集部員を経て、1985年よりフリーランス活動を開始。現所有車はポルシェ『ケイマンS』、スマート『フォーツー』、そしてVW『ルポGTI』(ただしドイツ置き去り)。