イタリアに住んでいたとき、強く思ったことがある。街のなかにいくつも現れるラウンドアバウト。タイミングを見計らって、一気にぐっと入り、出たいところで間違いなく出るためには、それなりのサスペンションが必要になるということだ。
ラテンのサスペンションがしなやかなのは、道が作り上げたもの。ゲルマンのように、計算尽くめでいなすのではなく、ゆるい余裕のしなやかさで乗り切るのだ。『ルーテシア』に乗って、久しぶりにボローニャのラウンド・アバウトを思い出してしまった。いえ、ルーテシアはイタリア車じゃないんですけれどね。
コンパクトカーと思って乗ったら、嬉しい誤算が待っている。まったくもってこのサスペンションは、ヤバいのである。しっとりとか、しなやかとか、ねばるとか、凹凸がひびかないとか、路面情報までがじんわり伝わってくるとか、賞賛の言葉をぜんぶ連ねても間に合わないくらいだ。
小さいクルマが得意のちょい乗りでも感じるけれど、苦手といわれる高速&長距離でも、さらにすごさを発揮する。疲れない。怖くない。ぶれない。速度が低く感じる。がたがたしない。しなやかにこなす。腰が痛くならない(これはシートも関係してくるけれど)。なにをどうするとこんなに心地いいサスペンションになるのか、国産コンパクトと比較して、ただただ、感心するばかりである。
あわせて、1.2リットル+ターボのトルク感も褒めちぎろう。すでにVW『ゴルフ』で実証されているエンジンサイズながら、改めてルーテシアで体験して、そのすごさに顎がはずれそうだ。だって、1.2リットルですよ。それがターボに背中を押してもらったからといって、こんなにスムーズに加速するもんですか? 街中のストップ&ゴーはともかく、高速で巡航中に、さらにひとふみした域での反応のよさといったら、まあ。
ルノーが新しいデザイン・コンセプトを展開する最初の一台ということで気合が入ったというけれど、それにしても出来すぎじゃないのか。というか、フランスの免許とりたて女子は、このクルマから乗り始めるんだもの、そりゃ、クルマが楽しくなるのもわかるような。国産車も、小さいクルマの乗り心地をナメていると、「がたぴしして、疲れちゃう~」と、クルマ嫌い育成になっちゃうんじゃないの? と、ルーテシアのハンドル握りながら、真面目に考えてしまうのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。