【インタビュー】クルマに抱くイメージは「Love or Hate」…トヨタ エティオス のブランディング仕掛人

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マンジョット・ベティ氏
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トヨタの新興国向けコンパクトセダンで、2010年2月にインドで発売された『エティオス』。2012年5月にはインド国内での販売が10万台を突破し、厳しい市場環境でありながらも堅調な売れ行きを示している。

同車は商品企画から生産にいたるまで“現地現物”にこだわったモデルであるが、インド国内では“Q Class”というキーワードで、トヨタの品質(Quality)を強く訴えかけるマーケティングを展開している。そのブランディング/プロモーションの仕掛け人であるマンジョット・ベディ氏に話を聞く機会を得た。


◆ニューデリー生まれ、27年前に来日

マンジョット氏は、インド・ニューデリー出身の44歳だが、日本語は実に堪能だ。というのも、初めての来日はさかのぼること27年前、17歳の時。外交官である父親の仕事柄、アジアのみならず欧州や中東諸国など、世界各地での滞在経験を持つという、文字通りの国際人だ。

「私はインド人ですが、父親に付いて欧州から中近東、欧州、アジア諸国での生活を続けながら、現地の人びとの慣習やステータス、考え方に身をもって触れてきました。人びとがどう自分を、見せたいかというのは世界の国々よって大きく異なるということを学んだのです。この経験が今の仕事に大いに役立っています」というベディ氏。

大学やビジネススクールでの学びを経た後、広告会社「TYO」に入社。これまで様々な商材のプロモーションディレクターを務めてきた。トヨタのエティオスに関わることになったのはエティオスの商品企画がスタートした2006年の末からだという。

「インドは確かに人口が多いので市場としての大きなポテンシャルを秘めていますが、世界の中でもタフでチャレンジングなマーケットでもあります。道が悪く、頑丈さが要求されますし、ガソリンが高いので、燃費も良くないとだめ。定員以上の人を乗せて走ることも珍しくありません。このようななかで、インド発の戦略車ブランディングを任されたことは非常にやりがいがありました」(ベディ氏)


◆クルマはLove か Hateのどちらか。Likeはありえない

「国や地域によってコミュニケーションの取り方や受け止め方は大きく異なります。自動車というプロダクトにしても、お客様がメーカーに求めているものはその国々によって大きく違う。その地域にあったプロモーションが重要です」というベディ氏。

「クルマは機能性やスペックを重視する理性的な道具でありますが、一方でそのブランドやスタイリングも重視するという、エモーショナルな要素も重要です。むしろブランドがまずあって、そこから商品に入っていく人も多い。商品を多くの人に知らしめるに当たっては、感情に刺さるモノは何なのかを、まずは現地の人びとのインサイトを拾い上げることを心がけています」(ベディ氏)

実体験のマーケティング・インサイトの重要性を身をもって知るベディ氏が考えたのは、アイコン化されたブランドメッセージを発信することだった。「エモーショナルなプロダクトであるクルマは、Love か HateのどちらかでLikeはありえません。100人全員がLoveする必要はないのです」と断言するベディ氏がエティオスのブランディングにあたり意識したのは、トヨタの“品質第一”というブランドイメージだった。

「エティオスのようなコンパクトセダンは、結婚したり、昇進したり、あるいは初めて子どもができたり、というきっかけが初めて手に入れるクルマです。そこで“My First”というキャッチコピーを出すと共に、インドで初めて1から開発したトヨタ車でもあるので、“for India by India”という言葉もキャンペーンメッセージにしています」(ベディ氏)。まさにインド出身という出自と、トヨタのブランドイメージを熟知したベディ氏だからこそ思い浮かんだキャッチコピーといえるかもしれない。


◆“I”のビンディは「インドへの約束」

インドの、そして新興国向けの戦略車として重責を担う エティオスには、また、“Q Class”というコンセプトキーワードも与えられた。「クルマ自体の品質という意味もありますが、生活の質(Quality of Life)にも革新を起こしていく、という気持ちを込めています」(ベディ氏)

しかし、これらのコンセプトキーワードやキャッチコピーは作るだけでなく、いかに人びとに周知させ浸透させていくかが重要だ。自ら撮影から編集までこなすクリエイターであるベディ氏は、広告クリエイティブにも非常に気を配ったという。エティオスのローンチ時に放映したテレビCMでは、エティオス(ETIOS)のIの部分にインド人女性の眉間に付ける赤い印「ビンディ」をあしらった。

「このビンディは、インドでは“約束”という意味も込められています。トヨタのインドの人びとにコミットするということをこのクリエイティブの中で表現したかったのです」


こうしてエティオスは世に出たが、このモデルは中南米やインドネシアなどのASEAN色でも販売されるグローバルなモデルだ。またそれぞれの市場でのシェアやブランドイメージは各地で異なる。「お客様とコミュニケーションを取りながら、最適なマーケティングを探っていきます。どのメディアで展開するかも重要で、Webなのかテレビなのか雑誌なのか、それぞれアプローチ手法は異なってきますから」(ベディ氏)。

ベディ氏はエティオスだけでなく、『ランドクルーザー』などのブランディングもこなし、また海外諸国から日本への観光誘致のためのプロモーションディレクターなど、多方面にわたり活動をおこなっている。ここまで日本を含めた世界の風俗や慣習に通じた国際人は希有とも言える。自動車業界への関わりは今後も続けていきたいというベディ氏。今後の活躍が期待されるところだ。
《北島友和》

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