JR東海、リニア新幹線の環境アセス準備書を公表…詳細なルートが明らかに

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山梨リニア実験線で走行試験を行っている試験車両のL0系。実験線は中央新幹線の線路に転用される。
  • 山梨リニア実験線で走行試験を行っている試験車両のL0系。実験線は中央新幹線の線路に転用される。
  • 品川駅の地下に建設される東京都ターミナル駅(左)と名古屋駅の地下に設けられる名古屋市ターミナル駅(右)の断面図。名古屋市ターミナル駅は東海道新幹線の線路と交差する形となる。
  • 中間駅の断面図。山梨県駅と長野県駅、岐阜県駅は高架構造(左)を採用し、神奈川県駅は地下駅(右)になる。
  • 品川駅の東海道新幹線ホーム。中央新幹線の東京都ターミナル駅はこの下に建設される。
  • 高架橋の標準的な断面図。桁式(左)のほか「新形式」の高架橋(右)も採用する。場所によってはフードで高架橋を覆い、騒音対策を強化する。
  • トンネルの標準的な断面図。都市部では円形トンネルが採用される。
  • 都市部のトンネルに設けられる非常口の断面図。都市部は大深度地下を長大トンネルで通るため、約5kmおきに非常口が整備される。

JR東海は9月18日、東京都と大阪市を超電導磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)で結ぶ中央新幹線について、第1期区間の東京都~名古屋市間(2027年開業予定)の環境影響評価準備書を公表した。第1期区間の詳細な予定ルートや駅の位置などが明らかにされた。

準備書によると、第1期区間の全長は山梨リニア実験線42.8kmを含む286kmで、このうち246kmはトンネル。線内には東京都ターミナル、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、名古屋市ターミナルの6駅を設置する。東京都ターミナルと神奈川県、名古屋市ターミナルの3駅は地下駅、それ以外の3駅は地上駅とする。

このほか、神奈川県相模原市緑区鳥屋付近に約50haの関東車両基地、岐阜県中津川市千旦林付近に約65haの中部車両基地をそれぞれ設置。このうち中部車両基地は工場機能も設ける。変電所は10カ所、保守基地は8カ所に設置する。また、都市部のトンネルでは首都圏に9カ所、中部圏に4カ所の非常口を設ける。

起点の東京都ターミナル駅は、品川駅(東京都港区)の東海道新幹線ホームの真下に新幹線の線路と並行する形で設置。地上から約40mの地下に幅約60mの地下駅を構築する。東京都ターミナル駅からはトンネルで南に進むが、すぐに右にカーブして西南西~西に進路を変え、JR橋本駅(相模原市緑区)付近の地下に神奈川県駅を設ける。

神奈川県駅から先もしばらくトンネルとなり、津久井湖城山ダムの東南東側で地上に出て相模川を渡る。相模川の先は再びトンネルが連続する区間となるが、津久井湖の南側あたりで回送線が分岐し、分岐点から南西側約4kmの地点に関東車両基地が設けられる。

神奈川県境を越えて山梨県に入ったところで、現在の山梨リニア実験線に接続する。ここからは実験線の線路を転用する形でトンネルが連続する区間を進む。実験線の終点部からは甲府盆地を高架橋で進み、途中に山梨県駅(甲府市大津町付近)が設けられる。身延線とは山梨県駅から約3km先の小井川駅付近で交差する。

小井川駅付近から左へ緩やかなカーブを描いて進路を南西に変えるが、富士川町最勝寺付近からトンネルに入り、右にカーブして進路を再び西に変える。ここからは赤石山脈(南アルプス)中南部を貫く長大トンネルが連続する区間となる。途中、静岡県内の山岳地帯(静岡市葵区)を通るが、駅は設置されない。

静岡県から長野県に入った後もトンネルが続くが、天竜川橋りょうとその前後の区間は地上に出て高架橋に。天竜川を渡って飯田線伊那上郷~元善光寺間のほぼ中間付近で同線と交差し、その手前に長野県駅(飯田市上郷飯沼付近)が設置される。

飯田線との交差部からは再びトンネルに入り、中央自動車道恵那山トンネル北側の約5~10kmを西へ進み、長野県と岐阜県の県境付近から進路をやや南西に変える。木曽川との交差部付近は地上に出て、中央本線坂下~落合川間の線路と交差。中央本線の北東側を南西方向にトンネルで進む。美乃坂本駅付近では地上に出て、同駅の名古屋方で中央本線の線路としばらく並走。このあたりに岐阜県駅(中津川市千旦林付近)が設置され、同駅の東京方に中部車両基地が設けられる。

岐阜県駅の先で中央本線と交差して同線の南側を走るが、すぐに北側に戻ってトンネルで進み、太多線との交差部(根本~姫間)もトンネルとなる。このあたりから進路が南西方向に変わって愛知県内に入り、同県内は全区間が地下となる。

中央本線神領駅の名古屋方や勝川駅の南側、名古屋市営地下鉄上飯田線上飯田駅付近などを経て名古屋城南側の官庁街を地下トンネルで進み、名古屋駅(名古屋市中村区)大阪方の地下に第1期区間の終点となる名古屋市ターミナル駅を設置する。地上約30m、幅約60mの地下駅で、東海道新幹線とは直角に交差する形となる。

名古屋市ターミナル駅から先も少しだけ今回の環境アセス手続きの範囲に入っており、同駅からそのまま南西方向に進み、太閤通りに合流したあたりで太閤通りの真下を西進。名古屋市営地下鉄東山線中村公園駅付近が第1期区間の線路の終点となる。

詳細なルートが確定したことで、中央新幹線の建設計画は大きく前進した。今後は全国新幹線鉄道整備法に基づく工事実施計画の申請や認可、用地買収などの手続きを進め、2014年度からの着工を目指す。

《草町義和》

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