ジャガーのフラッグシップスポーツである『XKR』の上に用意された、さらにスポーティなスペシャルモデルが『XKR-S』だ。XKのV8エンジンにスーパーチャージャーを付け、さらにパワーアップされた心臓はじつに550馬力のパワーを誇る。発進時にアクセルをグイッと踏み込んだ瞬間に味わえる、そのパワフル感と言ったらもう次元が違う感覚。もっとパワーのあるFRモデルもあるが、ジャガーというブランドでこうも暴力的な加速をしてくれると、その意外性がうれしかったりする。このV8エンジンのサウンドはアイドリングでは、アメ車みたいなドロドロドロッという響きを持っている。自然吸気のXKとはもちろん、同じスーパージャー付きのXKRとも違う。これがエンジンを回していくと、高音質のスポーツカーらしいサウンドに変貌する。このギャップ感もまた楽しい。加速時のトラクションの高さだけでなく、コーナリング時のグリップ感の高さも素晴らしい。ただ、グリップが高いだけでなく回頭性のよさとグリップ、そしてクリッピングポイントを過ぎてからの脱出加速の素晴らしさ、どれをとっても魅力的だ。エンジンの出力はもちろんだが、それを受け止めるフロント255/35ZR20、リヤ295/30ZR20のピレリ『Pゼロ』と、アクティブ・ディファレンシャルコントロールの存在も忘れてはならない。このタイヤサイズの組み合わせは510馬力のXKRと比べると、リヤが1サイズ太くなっている。パワーを考えれば当然だが、リヤを太くすると今度は曲がりにくいクルマになるものだ。それをアクティブ・ディファレンシャルコントロールで制御している。コーナーを曲がりながらパワーを掛けるとオーバーステア気味になり曲がりやすいというワケだ。XKRで不足気味に感じたステアリングインフォメーションもしっかりとしていて、とにかくワインディングを走るのが気持ちよく、ついついハイペースで走ってしまったが…よくよく考えるとこのクルマ、車両本体価格で1750万円。ちょっと気軽に飛ばしすぎた。パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★諸星陽一|モータージャーナリスト自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活躍中。趣味は料理。