『フォーカス』の悩みは、アメリカン・ブランドということだろう。フォードと聞けば、『マスタング』や『エクスプローラー』。「アメ車でしょ」と言われてしまって、いえ、確かにブランドはアメリカなんですけれど…もごもご。しかし、その走りたるや、完全に欧州のしゃきーんとした乗り心地である。SUVの『クーガ』に乗ったときに、目からうろこがどばどば落ちるほど、そのびしっとした乗り心地にのけぞったけれど、このフォーカス、そのクーガのシャーシを使っているだけあって、走りたるや、完全にスポーティ系なのである。共通してあるのは、サスペンションの独特な味付けだ。アクセルを踏んだとき、加速する前の踏ん張りがない。ぐっと沈み込んでから前にでるというあのタイムラグがほとんどないのである。踏む=進む。このリアルな動きの気持ちよさったらない。ハンドリングもしかり。今回は、先代よりもハンドルの動きをクイックに味付けたということだが、それもあいまって、まさに、切る=ノーズが向きをかえる。それでいて、不安がまったくないというのはどうしたことだろう。ふつう、これだけ動きがシビアだと、ハンドル操作に緊張感をもたらすものだが、それがない。安心して落ち着いて、それでいてシャープ。やるなあ、フォーカス。そして先代で不評だったインテリアの質感のあまりのなさも、一新された。凹凸をうまくつけた攻撃的な雰囲気をかもし出すインテリアは、なかなかよろしい。シフトレバーの親指部分に、マニュアル操作のアップ&ダウンスイッチをつけたというのも、アイディアである。新型という意味では、アイドリングストップがないというのが、時代に乗り切れていない感はあるものの、でも、ここまで楽しく走れるのなら、文句はないというものだ。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。