2月にスペイン バルセロナで開催された「Mobile World Congress(MWC)2013」では、NFCがひとつのキーワードとなっていた。会場内に貼られたスマートポスターによって、案内情報や配布資料がダウンロードできるサービスが行われていたし、NFC対応端末は、登録者のIDカード代わりにもなっていた。会場外でも、バルセロナ市内の地下鉄の駅や観光スポットなどにスマートポスターが掲示されるなど、街ぐるみでNFCサービスの紹介に取り組んでいた。
日本市場では現在Felicaが先行しており、端末の対応もFelicaが圧倒的である。海和氏も、「一年か二年はFelicaが優勢だと思っていますが、その先はまだわかりません。既存のFelicaを有効に使いながら、経済合理性を考えて、入れられるところにはNFCを入れていきたいと考えています」としている。対して韓国・中国はNFC Type A/BをSIMに搭載する方式で進んでいる。相互乗り入れは簡単ではないような気もする。この問題については、FelicaとNFC Type A/Bの共通仕様部分を3ヵ国のキャリアで策定することで対応する予定だ。幸い、RFモジュールは共有できるので、端末側の問題は少ないとのこと。また、国内でFelicaが優勢と言えども、グローバルでみるとモバイルNFCの市場が立ち上がっているのは日本と韓国ぐらいのもの。「今の日本がNFCに移行していくことによるグローバルへの貢献度はまだまだ大きく、日本の要件は無視できないはずです」(モリ氏)とのこと。
■端末や下位レイヤの違いを意識させないことが重要
さらに、日本においては当面FelicaチップとNFCチップとのデュアル構成になるかもしれないが、サービス全体としてはアプリケーション、サーバーなどのバックグラウンドインフラ、運用などで違いは吸収でき、相互乗り入れに問題はないという。「FelicaにしろNFCにしろ、ユーザー側から見れば、できることに大きな違いはありません。携帯やスマートフォンでものが買えたり電車に乗れることが重要なので、端末の違い、NFCの方式の違いなどはユーザーに意識させないことが重要だと思っています。」(海和氏)と言うように、3ヵ国のキャリアが策定する共通仕様には、Felica、NFC Type A/Bの3つのプロトコルと、各国ごとの既存アプリをサポートすべきと規定されるそうだ。
海和氏は、具体的なプランについて「これからの部分はありますが」と前置きしつつ、「13年度の上期中に、韓国のcash beeというチャージ可能なポイントカードのサービスにドコモのNFCが対応する予定です。これは地下鉄など交通機関でも利用できます。また、ドコモiDとMasterCardのアライアンスによって海外51ヵ国でNFC決済を可能にする計画もあります」と答えてくれた。中国との連携でも銀聯カード(China UnionPay)や北京の公共交通機関パスとの相互乗り入れを考えている。ユーザーが、自分が利用しているサービスの方式がFelicaなのか、NFC Type A/Bなのかを意識することなく、気づけばドコモの端末で海外でも地下鉄に乗れたり買い物ができるようになっている。そうした状況が理想だという。