LS600hがデビューから5年目にして大幅なマイナーチェンジを受け、外観デザインを変更するとともに、新たに「Fスポーツ」を追加した。普通ならフルモデルチェンジを受けてもおかしくない時期だが、大幅な改良ながらマイナーチェンジにとどめられた。クルマの信頼性の向上に力点を置いたためにマイナーチェンジになったという。外観デザインはGSから始まったスピンドルグリルがLSにも採用された。LSのサイズでこのデザインを見ると、かなりのインパクトがある。ヘッドランプを始めとする外装のランプをすべてLED化し、LEDならではの新しいデザインを演出したのも注目される点だ。運転席回りに使われる素材の良さや入念な作り込みなどによる高い質感は、さすがにレクサスのフラッグシップモデルらしいもの。ヨーロッパ車とは異なる日本車ならではの匠(たくみ)の技も取り入れている。内外装のデザインや仕様が変更されたのに対し、パワートレーンは基本的に従来のモデルと変わらない。ハイブリッドはエコカー減税が免税扱いになるが、大きな変更は受けていない。新グレードとして設定されたFスポーツは注目される存在だ。専用の内外装ほか、専用チューンのサスペンションやブレンボ製のブレーキ、19インチアルミ鍛造ホイールなどによってシャシー性能を向上させているからだ。試乗したLS600h Fスポーツは、シャキッとした足回りのフィールに好感が持てた。Fスポーツ以外の標準車とは明確な違いのある足回りで、快適性を損なうことなくしっかりした走りが確保され、箱根ターンパイクのワインディングも軽快に走り抜けた。LS600hを買えるユーザーの中に、走りを楽しもうとするユーザーがどれだけいるか分からないが、乗り心地の良さだけでなくしっかりした走りを求めるなら、断然Fスポーツが良い。V型8気筒の5.0リッターエンジンに電気モーターを加えたパワートレーンの力強さは相変わらずだ。最近はヨーロッパの高級車メーカーもハイブリッド車を設定しているが、LSのパワートレーンには滑らかさや力強さにおいて一日の長がある。試乗したLS600h Fスポーツは車両価格が1320万円で、オプション込みの価格は1650万円を超えていた。LSはそもそも余裕がなくては買えないクルマだが、お金のある個人ユーザーが自分で運転するクルマとして買うなら、この仕様がお勧めである。■5つ星評価パッケージング:★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★★オススメ度:★★★松下宏|自動車評論家1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。