確かに、僕もマツダ『CX-5』のことを今年の10ベストカーの中で一番高く評価している。
マツダが長年、開発してきた全く新しいSKYACTIV技術(シャシー、ボディ、エンジン、トランスミッション)は、今年の最も優秀な発表だったと思う。
日本COTYやワールド・カー・オブ・ザ・イヤー賞に投票する時、僕はいつもその年に、業界或は同セグメントに一番衝撃を与えたクルマに満点を入れるようにしている。その意味で、今年はどう見ても、燃費重視で軽量化を計りながら走りや快適性をグンとレベルアップしたCX-5がトップだと思った。しかし、このクルマはさらに重大な意味を持つと考えたんだ。
SKYACTIVのエンジンは『デミオ』にも搭載したけど、SKYACTIV技術を全面的に採用した車種はCX-5が初めてだ。中でも特に高く評価するのは、SKYACTIV技術のクリーンディーゼルと6MT(日本国内未導入)の組み合わせだ。ハイブリッドや電気を使わないマツダは、満タンで何と1300kmほどの航続距離を可能にした。これなら欧州車のライバルにも負けない。しかも、CX-5の外観も、マツダがこれから新『アテンザ』にも採用する新デザインになっている。つまり、マツダにとって、SKYACTIV技術は再生というか、生まれ変わりなんだね。
さて、考えてみれば、マツダはアテンザを出した10年前に、会社全体が「再生・生まれ変わり」をしていた。ということは、マツダはたった10年で、2回も蘇っているわけだ。そういう意味で、11月21日に富士スピードウェイのプレスルームで投票をした時、今までとは少し違う評価を形にしたのだった。
ピーター・ライオン|モータージャーナリスト
1960年オーストラリア生まれ。西オーストラリア州大学政治学部卒。1981年に同州の日本語弁論大会に優勝。全国大会2位。1983年に慶応大に留学。1988年から、東京を拠点にする国際モーター・ジャーナリスト活動を始める。現在、(米) Edmunds.com、(英) Auto Express、Evo Magazine、(独) Auto Bild、(伊) Quattroruote、(豪))Herald Sun、Motor Magazineなど10か国の有力誌に日本の新車情報や試乗記を寄稿。また、日本のホリデーオートやaheadなど自動車雑誌にも日本語で執筆中。ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー (通称: WCOTY) 賞共同会長。国際エンジン・オブ・ザ・イヤー賞選考委員。外務省認定外国記者。日本外国特派員協会会員、英国モータリング・ライター協会会員。愛車はジャガー『XJ8』。