力道山も石原裕次郎もピカソもマイルス・デイビスも乗っていたカリスマティックなガルウイングの初代『SL300』。モデルチェンジを繰り返しながら連綿と造り続けられているSLシリーズが最新のアルミシャシー+ボディに生まれ変わった。
アルミ化して軽くなり、剛性も増した好影響があらゆるところに及んでいる。トップを降ろし、速いペースで芦ノ湖スカイラインを駆け上がっていくが、快適のひとこと。風の巻き込みも少なく、乗り心地もすべてのカドが取れている。途中の舗装の荒れたところや段差などでも、ミシリとも言わない。
軽くなったとはいえ、操縦性や乗り心地などはあくまでも重厚で緻密。電子制御サスペンションやアクティブボディコントロールなどの電子制御デバイスによる挙動のコントロールも効果的で、平均速度と快適性をきわめて高いレベルに維持している。
4代目から屋根が電動ハードトップ式となってからは、走行中の開閉ができなくなったのが残念だ。メルセデスのポリシーに従って、ソフトトップモデルは走行中にも開閉が可能だが、ハードトップは完全に停止していなければ開け閉めができないことになっている。たとえ低い速度であっても走行中の開閉は非常に便利なので、とても残念だ。
SLシリーズは、強いて分類すれば「ドロップへッド・グランドツーリング」ということになるが、ライバルがちょっと見当たらないほどに独自性と完成度が高い。リアバンパーの下に足を踏み出すと自動的にトランクリッドを開閉できる「ハンズフリーアクセス」などの電動ギミックの類がたくさん装備されている。スポーツカー特有の刺激は皆無だが、安楽に速く、オープンで走りたい人にはピッタリの一台だ。
だから、欲しいと思った人は購入して期待を裏切られるようなことはないだろう。それだけ深い味わいと内容が備わっている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア・居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
金子浩久|モータリングライター
1961年、東京生まれ。主な著書に、『10年10万キロストーリー 1〜4』 『セナと日本人』『地球自動車旅行』『ニッポン・ミニ・ストーリー』『レクサスのジレンマ』『力説自動車』(共著)など。