【インタビュー】「モビリティへの貢献は100年前から」日本ミシュランタイヤ ベルナール・デルマス社長

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日本ミシュランタイヤ ベルナール・デルマス社長
  • 日本ミシュランタイヤ ベルナール・デルマス社長
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  • 日本ミシュランタイヤ ベルナール・デルマス社長
  • インタビュアー 河口まなぶ氏
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2012年4月1日より業界初となる「満足保証キャンペーン」を展開している日本ミシュランタイヤ。このキャンペーンは、購入したタイヤ(対象商品:MICHELIN Pilot Sport 3と MICHELIN Primacy LC)に満足できなかった場合、取り付け工賃を含めたタイヤ代金を返金するという内容である。

「自信があるから試してください!」というキャッチフレーズからも、ミシュランのプロダクトに対する誇りの高さを感じる。だが果たしてこのキャンペーンの意図はどこにあるのか。

そこで今回、日本ミシュランタイヤの代表取締役社長であるベルナール・デルマス氏に話を伺ってみると、今回のキャンペーンも含め、ミシュランの“日本に対する姿勢”が見えてきた。

---:歴史の古いグローバル・ブランドであるミシュランですが、中でも日本市場との関わり合いは古く、独自の展開もしています。日本市場参入のきっかけ、要因は何だったのですか。

デルマス:日本では1970年代から国内向けのクルマへミシュランタイヤの装着が始まりました。同時に日本には数多くの自動車メーカーがあり、世界に日本車が出て行く時期でもあり、日本の自動車メーカーとの関係ができていきました。我々は、日本の市場におけるユーザー/気候/路面といった独特のニーズを勉強していくなかで、日本で研究開発を行なうべきだという判断に達したのです。特に日本では、ユーザーがノイズに対して敏感で静かなタイヤを求められる特殊な市場性がありました。また、冬のアイス路面が厳しいというのが世界的に見て珍しくもありました。そこで群馬県の太田に研究開発センターを持ち、アジアの拠点として日本について勉強してきたという経緯があります。つまり市場の声を“聞いて”態勢を整えてきたのです。

---:ミシュランはOEMの専用タイヤをつくらないという企業DNAを持っていると聞いていますが、先の話を聞くと市場に合わせたものは開発していく、ということでしょうか。

デルマス:確かにOEMの専用タイヤを開発しないことがミシュランのDNAでもあります。もちろん自動車メーカーとタイヤの共同開発を行ったり、タイヤのチューニングを行ったりするのですが、それでも市販されている銘柄と全く同じものをベースに共同開発やチューニングを行います。結果、リプレイスに履き替える時に、最初に装着されていた製品と大きな差が生まれないようにもなっているわけです。そうした共同開発やチューニングと同様に、そのタイヤが使われる市場や使用条件や気候を勉強して次世代の製品に反映させています。自動車メーカーに対しても、市場に対しても様々に意見を“聞いて”プロダクトに反映しているのです。また逆に、そうした特定の市場で聞いた声が、次世代製品のコンセプトに反映されることも多々あります。

---:例えばどんなものが反映されたのですか。

デルマス:日本の研究開発センターでは特に、ノイズとウインターの研究開発は進んでおり、既に20年やってきたことでかなりの実力を付けています。現在は日本で市販タイヤは生産していませんが、こうした分野で日本がリードしてやってきています。また今後を考えたときには、日本の自動車メーカーが得意なハイブリッドやEVによってタイヤのニーズに変化がもたらされると思っています。十数年前に『プリウス』が登場した頃、タイヤは変わるだろうと個人的に思いましたし、特に転がり抵抗の重要性が変わると思っています。この辺りに関しても様々に声を“聞いて”いけると思います。

---:デルマス社長はエンジニア出身でありながら、マネージメント側の職にも就いてきたとお聞きしますが、デルマス社長にミシュランという企業はどう映っていますか。

デルマス:長い歴史を振り返ると、我々のルーツはタイヤにありますが、目指してきたことはずっと“モビリティへの貢献”だったのです。皆さんご存知のミシュランガイドをつくったことは、100年前に初めてモビリティへのアテンドを行なったということでもあります。その後地図をつくったり、道路標識をつくったりと、常にタイヤを売るだけでなく、ユーザーの方々にモビリティを使って出かけてもらうような働きかけをしてきました。私には、製造技術から入って、その後人事部を経て、さらに研究開発に携わった経緯があります。そうした中で感じてきたミシュランという会社の特徴は、人間の尊敬や理解がベースになっているということです。社内でも社外でも、とにかくコミュニケーションを大切にし、“聞く”ということを大切にすることで、様々な理解を深めていこうという姿勢があります。実は今回の「満足保証キャンペーン」も、そうした姿勢の現れでもあるのです。

---:と言いますと。

デルマス:自信がある、とは言っていますが、つまりはこうしたキャンペーンを通して勉強をしたいと思っています。日本のユーザーの皆さんからのフィードバックを得たいと思っているのです。日本のユーザーの皆さんは、製品を細かく見ています。特にブランドや性能に対しての要求値が高いので、本社でも日本は重要なマーケットと位置づけられています。その意味では日本はユーザーのニーズや好みを勉強できる場所であり、プロダクトのショーケースのような場所でもあるわけです。そうしたユーザーの皆さんとコミュニケーションをとり、声を“聞く”ことで、次の製品が良くなるような研究開発につなげていきたいのです。


ご存知の方も多いだろうが、今回のインタビューは全て日本語で行なわれた。デルマス氏に限らずミシュランでは、言語を現地に合わせるのが基本であり、そのための教育が本社で行なわれる。ゆえにミシュランには日本語を話す人が非常に多いのが特徴だ。

デルマス氏の日本語を聞いていると、いかにこの市場でのコミュニケーションを深めたいかが姿勢として理解できる。こうした長年の取り組みが評価され、6月20日、デルマス氏はフランスよりレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエに叙された。日本ミシュランでの活動を通じて、日仏関係の発展に貢献した事が受賞の理由だ。

デルマス氏は“聞く”という言葉を多用した。これがミシュランの姿勢を現している。今回の満足保証キャンペーンも含め、ミシュランとは“聞く”ということに根ざしている会社といえる。
《河口まなぶ》

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