12.8km/リットルという低燃費を誇る三菱ふそう『キャンター エコハイブリッド』に搭載されるDCT「DUONIC」+ハイブリッドシステムは、確かに優れたパワートレーンだ。しかし、純粋に小型トラックとして評価をしていくと課題もある。
そのひとつが乗り心地。ベースのHVではない「キャンター」(以下、標準車)には、前輪にコイルスプリングを採用した独立懸架式モデルがあるが、「キャンター エコ ハイブリッド」(以下、HV車)はすべてがリーフスプリングによるリジット式。フル積載時での車両安定性や耐久信頼性に関しては問題がないというが、試乗時のように半積載で路面状況が悪い道路での走行となると独立懸架式モデルと比べ、キャビンの上下動が極端に増えてしまう。また、アクセル&ブレーキペダルの位置とリバーススプリングは標準車と同じというが、これもHV車特有の“足の力をちょっとだけ抜く”といった操作に馴染まず、回生量を増やすため繊細なペダルワークを駆使すると踝付近が痛くなる。物流界にも高齢化の波は押し寄せているわけで、安全性の向上という観点からも、身体的負担の軽減を望みたい。
最少回転半径だが、独立懸架式の4.5mから0.6m増え5.1mとリジット式は不利だ。取り回し性が問われる小型トラックだけにユーザーはどう評価するだろうか。ただ、車両重量に関してはHVシステム分として約145kg程度重くなっているものの、システムを見直したことで軽量化が図られており、先代から比べればその差は少なくなった。さらに、車両価格の安さも魅力だ。標準車との価格差(約100万円)も、消耗品を含めたランニングコストで計算すると3~4年で吸収できるという。
燃費数値を向上させる「ISS」(アイドリング・ストップ・スタート機能)は全車標準装備だ。しかしながら、完全停止から5秒後のエンジン停止となるため、正直、もどかしさを感じる場面もあった。乗用車と違って頻繁なアイドリング・ストップは実際のところ不便なこともあるし、シリンダー内のオイルシール性に対する信頼性を損なうという見解もあるため、この設定を一概には否定できない。
ただ、ダイムラー・グループのメルセデス・ベンツが採用しているブレーキペダルを深く踏み込んだ際にブレーキホールド機能が働くように、停止時、完全にブレーキペダルを踏み込んだ際は、なるべく早くエンジンを停止させる機能があってもいいと感じた。先代のACGスターター方式から通常のスターターモーター方式に変更されたこともあり、エンジン再始動時に必要な時間が増えてしまっているので、せめてこうした部分で時間短縮を図ることができれば実用性がさらに向上するだろう。
また、先代には装備されていた坂道発進で便利なブレーキホールド機能「EZGO」もなくなっている。開発陣は「モータークリープで十分」というが、御殿場付近の勾配路ではブレーキオフで下がることもあった。早期復活を望みたい。