【池原照雄の単眼複眼】今期営業利益の回復度は58%…乗用車8社

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豊田章男社長
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  • 2012年3月期決算会見 カルロス・ゴーン社長
  • ホンダ決算会見
池原照雄の単眼複眼
 今期営業利益の回復度は58%…乗用車8社

◆前期業績は4増・3減・1赤

自動車メーカー各社の今期(2013年3月期)業績は、依然として超円高の圧力を受けるものの、自然災害の影響で販売を伸ばせなかった前期からはV字的に回復する。もっとも、各社の連結営業利益を今期予想と、リーマン・ショック前の最高額を比較すると、回復率は6割弱にとどまる。来期以降のピーク更新へ向け、今年度は新興市場対応と円高抵抗力をもう一段強める重要な1年となる。

乗用車メーカー8社の12年3月期連結決算は、東日本大震災、タイの洪水と相次いだ自然災害や円高の影響に濃淡があり、まだら模様になった。減産の影響が大きかったトヨタ自動車とホンダ、輸出比率が高く円高の影響が出やすい富士重工業の3社は減益に、また、輸出依存が最も高いマツダは赤字幅を拡大した。

これに対し、減産の影響が軽微か、あるいは生産回復のペースが速かった日産自動車、スズキ、三菱自動車工業、ダイハツ工業の4社は営業利益、純利益ともに増益を確保した。国内軽自動車トップで、海外事業はインドネシアとマレーシアに特化しているため、円高の圧力も受けにくいダイハツは、営業利益が2期連続で最高更新と好調だ。

◆ピーク超えはダイハツのみ

今期は、明暗を分けた前期とは様変わりで、全社が増益(マツダは黒字転換)を予想している。製品の供給不足で商機を逸した前期分を取り戻すように各社は販売攻勢をかけ、業績回復につなげる。表は、乗用車各社の連結営業利益をリーマン・ショック前の最高額と、今期予想を比較してまとめたものだ。8社の今期予想の合計は約2兆7000億円となり、最高益の合計である4兆7000億円規模に対し、58%まで回復する。

 乗用車8社の連結営業利益比較(リーマン前最高額と今期予想、単位:億円、%)
 企業名 
 最高益/(決算期)/今期予想/回復率 
 トヨタ自動車 
 22703/(08・3)/10000/(44)
 日産自動車 
 8718/(06・3)/7000/(80)
 ホンダ 
 9531/(08・3)/6200/(65)
 スズキ 
 1494/(08・3)/1200/(80)
 マツダ 
 1621/(08・3)/300/(19)
 三菱自動車 
 1086/(08・3)/700/(64)
 ダイハツ 
 652/(08・3)/1200/(184)
 富士重工 
 914/(00・3)/673/(73)
 (合計) 
 46719/ー/ 27270/(58)

トヨタは5年ぶりに1兆円の大台を確保するものの、ピークが2兆3000億円近くと巨額だったため、回復率は44%にとどまる。また、最終損益で5年ぶりの黒字確保をめざすマツダは2割程度に戻す予想となっている。

一方で、今期の世界販売で過去最高を計画している日産、ホンダ、スズキ、富士重工は65~80%まで利益額が回復する。さらに、すでに過去最高を更新中のダイハツは、今期も3期連続の最高益を見込んでおり、ピークに対し1.8倍の利益を計上する。

◆5年前と同じ体質ならトヨタの1兆円は飛ぶ

各社の今期の想定為替レートは一部を除き、おおむね1ドル80円、1ユーロ105円と、決算発表時の足元のレートとした。これに対し、各社の最高益が集中した08年3月期は、1ドル114円、1ユーロ162円という円安水準だった。

この間、対ドルでは34円もの円高が進んだことになる。1円の変動で約340億円の営業利益が変動する現在のトヨタの対ドル感応度で34円の影響を試算すると、減益額は1兆1560億円に達する。つまり、5年前と販売規模および販売価格やコスト構造が同じだとすると、対ドルの円高影響だけで、トヨタの今期予想の営業利益1兆円は飛び、逆に1500億円規模の赤字に陥る。

各社の今期収益の回復は、固定費削減を含む原価低減の推進や、生産の現地化促進による円高への対応策が着実に実りつつあるからだ。ただ、依然として「今期の最大のリスクは円高」(日産のカルロス・ゴーン社長)であり続ける。各社はモノづくり基盤確保の狙いから、一定規模の生産を日本に残しながら、円高抵抗力を高めるという厳しいかじ取りを迫られている。

《池原照雄》

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