コイツは新車で買えるクラシックカーだ。レトロモダンなカタチのことを言っているんじゃない。
乗った感じ、運転した気分、動かすことの快感、そういったものが、ちょうど、“新しいクルマには興味がなくなったけれど、古いクルマに乗ったらやっぱり楽しかった”という、クルマ好きの心の奥底にある気持ちと、見事に結びつきマッチングしたという意味で、だ。
あのうるささ、振動、ばらっとしたクルマの動きは、“文句を言いたい”を超えて“これがクルマだよ!!”。30年近く前に免許を取って(あ、取ってる最中もそうだけど)初めてクルマを転がしたときの興奮や、キャブのスーパーカーを初めてドライブしたときの感動や、MGやホンダSハチなどクラシックライトウェイトに初めて乗っかったときの感激や、まるで蒸気機関車のような戦前のベントレーが初めて自分の操作で動いてくれたときの感心などと、コトの軽重の差こそあれ、よく似ている。
もともと『500』は、よくできたクルマである。しかも、今回、ツインエアに使ったエンジン技術は最先端。ちゃんとエコノミー&エコロジーにも貢献している。それでいて、クラシックカー級のエゴな味わい。これは趣味人のための、飛び切りのデイリーカーだと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★(ただし既にクルマ好きorクルマ好きになりたい人限定)
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。