【池原照雄の単眼複眼】単なる“派生”ではない プリウス のミニバン

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プリウス・スペースコンセプト
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車体の共通化はアンダーボディーの一部のみ

トヨタ自動車は4月下旬に『プリウス』のミニバンモデルを日本で発売する。そのプロトタイプが『プリウス・スペースコンセプト』として公開され、試乗する機会を得た。国内向けは5人乗り2列シートと7人乗り3列シートが投入される。

派生車種というより新開発のミニバンHV(ハイブリッド車)であり、同サイズのガソリン車からの乗り換え需要をつかみ、HVの普及を後押しする存在となりそうだ。

スペースコンセプトは北米では『プリウスv』、欧州では『プリウス+』として現地のモーターショーで公開されたもので、国内名称は未定。プリウスのデザインを踏襲し、1.8リットルのエンジンや最高出力が60kwのモーターなどパワートレインは同一だ。

車体サイズは、室内空間を広めるためプリウスより全長で155mm、前幅は30mm、全高は85mm延長し、ひと回り大きくした。ホイールベースも80mm長い2780mmとしており、車体の共通化はアンダーボディーの一部にとどまっている。

プリウスのブランド力を生かすための派生車種ではあるが、外観デザインを変えれば、別モデルとして十分通用するほど、力が入っている。

◆電池は2ウェイだが出力性能、燃費は同一

2次バッテリーは、2列シート車はニッケル水素電池としたものの、3列シート車には同社のHVでは初めてリチウムイオン電池を採用した。同電池のエネルギー密度の高さを3列シートの居住空間確保につなげている。

それぞれの配置は、ニッケル水素がプリウスと同じ後部のフロア下としているのに対し、リチウムイオンは運転席と助手席の間のセンターコンソール部への収容とした。電池容量はリチウムイオンが1kwh、ニッケル水素は1.3kwhとリチウムイオンがやや小さい。

しかし、HVの場合フル充電することはなく、制御範囲(使用領域)は上限が容量の8割程度と設定しているので、パフォーマンス上の差はないという。両タイプとも約2kmのEV走行が可能だし、「車両としての出力性能や燃費は(2列シート車も3列シート車も)同一」(開発主査の粥川宏氏)だ。ちなみに燃費は、10・15モードで「30km/リットル以上」を確保する。

◆ミニバン市場にハイブリッド化の波?

バッテリー重量はリチウムイオンが34kg、ニッケル水素が42kgであり、前者は3列目シートの重量負担分をほぼ稼ぐ格好となっている。また、容積はリチウムイオンがほぼ2分の1という。同電池は、プリウスのPHV(プラグイン・ハイブリッド車)向け同様に、子会社のプライムアースEVエナジーで生産する。

トヨタはHV用の電池について、信頼性などの実績が高いニッケル水素を主体としながら、車種に応じてリチウムイオンと使い分ける方針を打ち出している。それを具現化する今回の“2ウェイ”方式は、同社のバッテリー制御ノウハウの高度化にも寄与しよう。

ごく短距離の試乗だったが、ホイールベースを長くしたことなどにより直進性や安定感はプリウスよりワンランク上との印象だった。価格は2列シート車のベースモデルで235万円程度と目されている。その程度に設定されるのなら、ミドルサイズのミニバン市場にHV化の波を起こす予感がする。

《池原照雄》

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