充実した保証と高い品質が売りの「認定中古車」に注目が集まっている。昨年秋、新車を対象としたエコカー購入補助金が打ち切られたことが背景にあり、中古車の割安感が見直され始めたからだ。一年で一番盛り上がる春商戦を迎え、各メーカーが力を入れている認定中古車に注目してみた。
◆独自基準で整備…高品質・性能保証
中古車の魅力は、割安感などいろいろあるが、反面、品質にばらつきがあったり、保証が不十分であったり、不安を抱える人は少なくない。そうしたネガティブなイメージを払拭しようと、インポーターや一部の国産車ディーラーは、認定中古車制度を導入している。
認定中古車制度は、各メーカーが独自に定めた厳しい基準をクリアし、部品交換や外傷の補修などを行った車両を「認定」した上で、手厚い保証を付与。上質な中古車を、より多くの人が気軽に安心して買えるようにする仕組み。要は「極上の中古車」だ。
一般的な中古車と比べて価格は若干高くなることが多いが、品質が保証され、24時間ロードサービスなどアフターサービスも充実しているため、人気がある。大半の認定中古車は、購入後1年間は新車と同様の保証が付いており、消耗品以外の部品(一般保証/特別保証の対象部位)が故障した場合は、無料で修理を受けられる場合が多い。
リセールバリューの高さも含め、こうした付加価値を考慮すれば、実際のカーライフにかかる総費用は、むしろ安上がりになる可能性もある。中古車選びのポイントがわからない、あるいは信頼できる専業店が近くにない、そんな人にはうってつけの存在だろう。
◆値崩れを防ぎ、ブランド力を維持する狙いも
日本で最初に導入したのはBMWだ。1987年、中古車の品質管理を強化し、それまであった「中古の輸入車は壊れやすい」というイメージを払拭させただけでなく、流通のシステムさえ根本から変える画期的な試みとして脚光を浴びた。値崩れを防ぎ、ブランド力を維持できるとあって、以降、多くの輸入車メーカーが認定中古車を導入した。
近年、国産車にも導入の動きが広がっている。三菱が独自規定の認定中古車をスタートしたのを皮切りに、2006年にレクサスが「CPO(Certified Pre-Owned)」という名称で始め、さらに09年は日産が一部の車種に導入した。各メーカー、中古車の下取りや販売を強化しているのは、認定中古車をエントリーモデル(入門車)と位置づけて、将来の新車販売に結びつけようという狙いがあるからだ。
◆新車と変わらないサービスを提供…レクサス
中古車が「認定」されるための条件や基準、保証の内容は各メーカーで異なる。特に差が出るのがアフターサービスだ。例えばレクサス。2年間・走行距離無制限の長期保証に加え、その間、定期点検が無料になる「CPOメンテナンスプログラム」を付けるなどして、他メーカーと差別化を図っている。特に高度な機構を持つハイブリッド車のラインナップを揃えるレクサスだけに、アフターケアの充実度は中古車選びの重要なキーポイントだ。
24時間対応のオペレーターサービス「レクサスオーナーズデスク」も見逃せない。これは事故や故障の時にサポートしてくれるだけでなく、「G-Link」を利用して、ナビの目的地設定、レストラン探し、ホテルの予約などを、オーナーの代わりにやってくれるというもの。新車でも好評のサービスだ。もてなしの心で安心と満足をお届けするというレクサスの立ち位置は、新車も中古車も変わらない、というわけである。また新車購入者と同様にディーラーのオーナーズラウンジも利用できるなど、インポート系ブランドにはない手厚いユーザーサポートで顧客満足度向上を図っている。
◆サービス拡充で顧客取り込み…ドイツブランド
レクサスを迎え撃つ輸入車ブランドで、拡充著しいのが最古参のBMWだ。08年、新たに導入した「プレミアムセレクション」は、有料ながら保証が業界最長レベルの4年間。また、昨年は保証を簡易化し、買い得感を強めた「ユーズドカー」を導入した。従来の「アプルーブドカー」と合わせて、3つの体制で顧客層の底上げを狙う。
メルセデス・ベンツは、09年、保証を強化した。期間を、それまでの1年間から2年間に延長し、品質の高さと安心感をアピールする。一方、アウディは昨年、対象車種を新車登録6年未満から8年未満へと拡大。品ぞろえを増やした。
品質が高くて、保証もしっかりしていて、ラインナップも多彩とあれば、中古車はずいぶん買いやすくなる。インターネットで検索し、実車を見ることなく、最寄りの販売店に取り寄せて購入できる。実際、このような方法で購入する人は増えており、レクサスでは認定中古車の購入者全体の3割を占めるという。あれこれ見回ったりする手間が省けるのも、認定中古車が人気を集めている理由なのかもしれない。