日本型スマートグリッドの課題と将来像…CSF実行委員長 横山隆一早稲田大学教授

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実行委員長の早稲田大学理工学術院・環境総合研究センター横山隆一教授
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  • パシフィコ横浜 16日まで開催
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日本で初めてスマートグリッド(次世代送電網)に焦点を当てたトレードショーである「クリーン発電&スマートグリッドフェア(CSF)2010」(パシフィコ横浜、16日まで)。実行委員会委員長・横山隆一氏に、わが国のスマートグリッド構想の現状などを聞いた。

早稲田大学理工学術院・環境総合研究センター教授でもある横山委員長は、日米のスマートグリッドの違いについて語った。

――まずスマートグリッドはどういった背景で生まれたものなのでしょうか。

横山:いわゆるスマートグリッド(次世代送電網)というのは、ヨーロッパから始まり、アメリカでモダングリッドという言い方で展開されたもの。自然エネルギーによる発電量が増えることによる電圧・周波数の安定性の低下、電力余剰など、既存の電力系統への影響を解決するための、電力需給の安定化・最適化を行うという動きです。さらにそこから雇用を創出し、経済の活性化を促進するという役目を担うことになっていくでしょう。

実は、アメリカのスマートグリッドの始まりは、日本とは少し異なります。アメリカは電力の自由化という社会的背景があり、そうなると電力会社は金儲けにならない送電線などの設備投資から次々と手を引いた。すると電力ネットワークはぼろぼろになり、停電が相次いだ。一度停電が起きると一兆円ぐらいの損失が生まれるという事態に陥った。そこでオバマ首相は、強固な電力インフラをつくるという政策を打ち出したわけです。

――では、日本の電力ネットワークはどうでしょうか。

横山:日本の電力会社は、巨額の設備投資によって立派な電力網を形成しています。ここまで成長してきた電力網のうえに、さらに新たな送電網に取り組むとなると、やや慎重な姿勢をとらざるをえないというのが日本の電力会社の現状です。自然エネルギーによる、周波数や電力が変動するような不安定な電気を取り入れるとなると、かえって安定した電力網を壊してしまうという恐れもある。

日本の太陽光エネルギーは、国内の原子力発電所50か所で生み出すパワーを持っています。が、1か所の原子力発電所で生み出す電力ぶんを太陽光パネルでまかなおうとすると、山手線1周ぐらいの面積がいる。こうした根本的課題をどうするかについても議論されているのです。

――日本がスマートグリッド化するにあたって必要なものは?

横山:まずひとつは、自然エネルギーによる発電のメインは太陽光であるということ。2つめは、ユーザーに広く情報提供を行い、エネルギーについての意識向上をはかり、節約してもらうこと。そして3つめは配電系統を整備すること。日本で使用する電圧は100Vから200V、ほかの諸外国は200Vから400Vで、わが国も配電の近代化をすすめていくべきだと考えられます。

こうした3つの実現を目指すのが、日本型スマートグリッド。今回のイベントでは、そういう日本型スマートグリッドに関心を持つ企業を中心に出展してもらいました。

――日本が第一に取り組むべき課題とは何でしょうか。

横山:まずお金。どういう資金の流れでつくるか、地方自治体などが自力で展開できるかどうかなど検討する必要があるでしょう。たとえば、ある自治体に国がお金を出し、“エネルギーパーク”のようなモデルをつくってあげて、それをほかの自治体に広げていくという拡張型スマートグリッドなども考えられます。しかし、1か所で終わってしまったらだめで、そのモデルが隣の町などに伝わっていかないと意味がありません。

お金をつくるという考えもある。国内の良質な電気を海外へ売る、低開発国などに存在する無電化地域に技術を売るというのもひとつの手段です。世界にはまだまだランプを灯して夜を過ごす地域があるのだから。そうした地域に安くて小さな電力系統をつくれば、隣りの村もまねをして電気をつくるようになり、いつの間にか無電化地域に電力ネットワークが形成されるようになるはずです。

EVEX:電気自動車開発技術展2010とCSF:クリーン発電&スマートグリッドフェア2010は16日が最終日、パシフィコ横浜で開催。

《レスポンス編集部》

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