姿カタチに愛嬌はないが、“使えるワゴン”としては世界一! …と、実際に触れてみてやっぱりそんな思いを新たにしたのが新型『Eクラス』のワゴン。後席アレンジ時のラゲッジスペースは本当に「呆れるほど広い」し、テールゲート側からワンタッチのレバー操作で行えるそうしたアレンジや、テールゲートの開閉に連動して電動で行われるトノカバーの開閉も、まさに“鉄壁ワゴン”の面目躍如というところ。一方で、そんな理詰めの設計からトノカバーとカーゴネットが一体化されたリトラクターの脱着は、ドイツの大男には“片手仕事”でも多くの日本人には重労働。脱着そのものの操作は単純ながら、如何ともし難いのがその重さ。確かに、このくらい頑丈に作らないとイザというシーンで荷室からキャビンへの重量物の飛び込みを防げないのかも知れないけれど、こういうのって「過ぎたるはなお及ばざるが如し」って言うんじゃない? と思うのは、ドイツに出掛けて重いドアの開閉に難儀させられた際にも感じる事柄…。めでたく“ポスト新長期”に対応のディーゼル・エンジンが発する力強さは、従来型の「E320CDI」で感心させられたのと変わらぬ印象。何しろ、すでに1600rpmから発せられるという540Nmの最大トルク値は、「E550」用の5.5リットル8気筒ガソリン・ユニットの530Nmを上回る大きさなのだから。アイドリング時にはボリュームは小さいものの明確なディーゼル音は、30km/hも出れば様々な暗騒音に紛れてもはや判別不可能。レンジの広い7速ATと組み合わされるので、力強い出足と100km/h時に1600rpmというクルージング回転数を両立させ、静粛性全般にも文句はナシ。一方で、「採用の理由を開発者に是非問い質したい」と感じたのが、排ガス浄化用の尿素水溶液タンクに場所を奪われて外されたスペアタイヤの代わりのランフラット・タイヤ。良路では滑らかな一方、継ぎ目や段差には敏感に反応という同構造タイヤが持つウイークポイントは、低負荷時でもフロント2.6/リア2.7barと内圧指定が高めな事もあってかそれなりに顕著。そんなこのモデルの試乗会を継ぎ目の多さとコンクリ舗装部分の荒れ方では定評のある(?)有料道路脇で行ったのは、もしかして失策だったかも!?というわけで、だったら“普通のタイヤ+修理剤”で済ませれば良さそうなところを、敢えてランフラット・タイヤを選んだのは、やっぱり思うところあっての事なのか? ま、そうは言っても、そんな「過ぎたるは…」のクルマづくりも、確かにメルセデスのファンを生み出すひとつの要素なのだけれど。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★フットワーク:★★★オススメ度:★★★★ 河村康彦|モータージャーナリスト1985年よりフリーランス活動を開始。自動車専門誌を中心に健筆を振るっているモータージャーナリスト。ワールド・カーオブザイヤー選考委員、インターナショナル・エンジンオブザイヤー選考委員。
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