日本仕様の真打ち
右ハンドル仕様に3リットルモデル、さらにはクーペと、着々とバリエーションを増やしつつある新型Eクラス。そうした中で、このほど追加された『E250シリーズ』は、「日本にはこれぞ真打ち!」とそう受け取れるモデルでもありそうだ。
メルセデスが推進する高効率化コンセプト“ブルーエフィシェンシー”のひとつの頂点とも思えるダウンサイジング・コンセプトに基づいた最新設計のエンジンは、アルミ製の骨格を持つ1.8リットルのターボつき4気筒ユニット。310Nmという最大トルク値は、従来の2.5リットル6気筒ユニットに対して26%という大幅なアップ。それでいながら「燃費は最大で21%の向上」というこの高トルク低燃費性の両立こそが、前述“ブルーエフィシェンシー” の真髄というわけだ。
そんなE250セダンの日本でのもうひとつのトピックが、輸入ガソリン車で初の”エコカー減税”対象車として認定された事。しかし残念なのは、減税対象が『アバンギャルド』仕様に限られてしまったという点。「実燃費には劣る重いクルマに対する方が、基準達成へのハードルが低い」という日本の制度の矛盾も表面化させているわけだが、それでも重量税、取得税の50%減免と翌年度の自動車税の約25%減免という現実的な恩恵が、人々の購入意欲を掻き立てる大きな要素となろう事は明らかだ。
◆数あるメルセデス・エンジンの中にあっても特徴的なパワーフィール
そこで何かと話題のE250CGIだ。“250”という数字が示すように、現状の日本仕様のEクラスの中では「最もベーシックな仕様」という事になるこのモデルだが、もちろんルックス上ではすでに馴染みになりつつあった6気筒モデルのそれに対して、事実上変わるところは何もない。
1.8リットルという”小排気量”のエンジンゆえにまずは走り出し時点での力感が気になるという人も多いかも知れないが、いざアクセルペダルを踏み込んでみればそんな疑念は杞憂に過ぎなかった事をすぐに実感する。すなわち、排ガスのエネルギーが高まってターボチャージャーが”本格稼動”をする以前のゾーンでも、その力強さに不満は全く抱かないという事。低フリクション化が徹底された最新のエンジン設計と、6気筒エンジンに対して2気筒減である事が生み出すそもそもの抵抗の小ささが、まずはこうしたシーンに明確なメリットをもたらしている事を納得出来る瞬間だ。
ひとたびスタートを切った後も、そんなエンジンが生み出す低回転域でのトルク感の強さには感心させられる。わずかに2000rpmから最大トルクを生み出すというスペックからそれはある程度は予想されたものではあったものの、「まさかこれほどとは」というのが率直な感想。そんな領域でアクセルワークに即応して太いトルクが実感を出来るのは「まるでディーゼル・エンジンのごとし」。さらにアクセルペダルを踏み続ければ、そんな力強さは6000rpm近くまで持続をする。そう、まるで「6000rpmも回る超高回転型最新ディーゼル」と表現しても良さそうなのが、この心臓が生み出す数あるメルセデス・エンジンの中にあってもちょっと特徴的なパワーフィールなのである。
◆6気筒モデル以上の軽快感とナチュラルさ
一方、こうなると「それではあらゆる点で既存の6気筒エンジンを凌ぐのか?」という質問が現れるかも知れないが、それはもちろん“No”というのが回答だ。
まずは3500rpm以上でのノイズが、やはりあくまで4気筒的。これは、Eクラス・セダンを“実用車”ではなく”高級車”と受け取る人にとっては、ちょっと気になる部分かも知れない。また、主にコスト的な要因からか6気筒モデルの7速に対してATが5速仕様となる点からも、やはりそれなりのフィーリング上の差が生まれている。ギア段数が少ない分、変速時のエンジン回転変動はどうしても大きくなる。これが、前述のノイズ面でのハンディキャップを、さらに加速させてしまう印象なのだ。
一方で、フットワークには6気筒モデル以上の軽快感とナチュラルさが感じられ、こちらはすこぶるつきの好印象。かくして、ある意味「新型Eクラスが持つポテンシャルが最も色濃く演じられている」とも表現出来そうなのがこの1台だ。