フィアット『グランデプント』も相当にカッコよかったが、それをベースにしたアルファ『MiTo』は輪をかけてカッコいい。
寸足らずでカッコいいなんてクルマはなかなかないものだが、MiToはいともあっさりとそのカッコよさを達成してしまっているあたり、さすがイタ車の面目躍如といったところ。エクステリアからインテリアまで、アルファロメオらしいオシャレ感や粋さがあり、見る者の物欲に訴える。
では走りは、というと、D.N.A.システムの「N(ノーマル)」状態では、これがなかなか素晴らしい。パワーこそたいしたことはないが、典型的なFF車らしい感覚で「スポーティ」に走れる。しかしD.N.A.システムを「D(ダイナミック)」に切り替えると、どうも挙動が不自然に感じられる。よりパワフルになり、さらにVDCの介入も控えめになり、リアルなスポーツ走行ができるはずなのだが、試乗車では足まわりがバタつく感覚があって、まるで運転が下手になったかのように感じられてしまった。これがこのクルマの実力だとはとても思えないのだが…。
そもそもこんなオシャレなクルマにATが用意されないのは辛いところ。デュアルクラッチ式ATの「DDCT」車を現在開発中のようだが、メーカー自ら「ベイビーアルファ」と呼ぶのであれば、2ペダル仕様はこと日本市場では必要不可欠だろう。フィアットがクライスラーと組んだあとは、もっとグローバルな商売ッ気が強まり、ATがないなんて話はなくなると期待したい。もしこのサイズ、このデザイン、このブランド力で、例えばパワーユニットがハイブリッドだったりしたら、日本でも爆発的に売れそうな気がするからだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
水野誠志朗|自動車ライター
97年に新車試乗記を中心とするウェブマガジン「MOTOR DAYS」を立ち上げ、以来毎週試乗記をアップし、現在550台を超える試乗記を公開。「クルマはやがてはロボットになる」として、走りだけでなく利便性・安全・エコの面から新たなクルマのあり方を提言している。名古屋市在住。