【中国 次世代トヨタ】システムが発注推奨するTOSS

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80仕様中上位7仕様がカムリ販売の8割以上占める

「広汽トヨタ(GTMC)の主力車種『カムリ』には、グレードやボディカラー、工場装着オプションを組み合わせた仕様が全部で80あります。この80仕様のうち、7つの仕様でカムリ販売台数の80%以上を占めます。11の仕様なら90%以上になります」(広汽トヨタ総経理助理 友山茂樹氏)。

80という数字は既に絞り込まれた数字でけして多い数ではない。それでも残りの 69仕様は、10%足らずのニーズを埋めるために存在しているということになる。そこで重要になるのが、ディーラーの仕入担当とGTMCの受給担当の密な連携である。顧客のニーズや売れ筋を正確に見極めて、車両の仕様や台数をオーダーし/割り当てるのが彼らの役目だが、これまでは長期在庫を生まない最適なオーダーを出すことはけして容易ではなかった。

◆オーダー作成支援システム TOSS

長期在庫車そのものは流通する車両全体を通してみればごくわずかなので、特に現場では“1台くらいは”とその存在は見過ごされがちだ。しかし、売り場を占有することで人気仕様の販売機会を損失させるだけでなく、数十万元というキャッシュフローが滞り(カムリの売れ筋モデルは約25万人民元=約340万円)、さらには在庫処分のために大幅な値引きを強いられる。これがボディブローのように販売店の経営を圧迫する。

「仕様別の販売実績を見ると、30日はおろか60日、90日もの長期在庫となっている “不人気仕様”を抱えているディーラーは少なくありません。さらに、営業担当が長期在庫を値引きしてようやく売りさばいた直後に、その実情を知らない仕入担当がまったく同じ不人気仕様を補充オーダーしてくるケースもままあるのです」(友山氏)。

販売実績や店頭在庫そして受注残から計算される“本来出すべきオーダー”と、ディーラーから“実際に出されてくるオーダー”との間に食い違いが発生することが長期在庫を生む要因になっている。この食い違いを最小限にとどめ、ディーラーへの適切・的確な仕入れを推奨するシステムが、SLIM(Sales Logistics Integrated Management:広汽トヨタの販売物流統合管理システム)の一角を担うオーダー作成支援システム「TOSS」(Total Order Support System)である。

「SLIMのディーラー版とも言える在庫管理システム『IMS(Inventory Management Sysytem)』を導入することで、在庫と鮮度の可視化をまず図りました。そこで明らかになった販売実績を細かく見ていくと、このような長期在庫を生み出す一定のパターンが把握できるようになりました。そこで、何を在庫すべきか、何をオーダーすべきか、そして何を生産すべきかをメーカーとディーラーとの間で共有し、ディーラーに適正なオーダーしてもらうことが重要だということがわかってきたのです」(友山氏)。

◆販売実績・店頭在庫・店舗特性を総合的に加味して推奨オーダーを提示

従来のディーラーの仕入担当は、2ヶ月前に大雑把に売れ筋を中心にメーカーに発注し、メーカーはそのオーダーに従って生産に入る。ディーラーは仕入れたクルマを一生懸命にさばき、もし見込み違いで不人気カラーが余ってしまった場合などは「ご希望のカラーは納車2ヶ月待ちですが、シルバーでしたら即納いたします。お値引きもいたします」というように、現場で調整していた。

このTOSSはひと言でいえば「各車種のどのよう な仕様・カラーを在庫すべきか、いま何を発注すべきかの情報を各販売店の発注担当者にアドバイスする」(友山氏)ものだ。ではどのようなデータに基づいてリコメンドをおこなうのか。

「SLIM では仕様別にいわば“売れ筋ランク”をABCの3段階に分けています。Aはいわゆる売れ筋の人気仕様で、Bもそこそこ販売が見込める仕様ですが、Cについては原則注文販売のみとし、在庫してはいけない仕様としています。これを元に、過去の3ヶ月の販売実績、現在の店頭在庫と受注残を加味してオーダーすべき仕様とその台数を自動的に算出し、“あなたの店舗はこの仕様を何台発注すればいいですよ”と推奨するのです」(友山氏)。

なお、このTOSSは一律に全ての店舗で同じような推奨がなされるというわけではない。ベースの台数は販売店の年度計画に応じて振り分けられ、それぞれの販売店の販売履歴と在庫状況を考慮に入れた推奨がなされるという。地域や店舗による人気仕様の差も考慮した上で、きめ細かなリコメンドがおこなわれているというわけだ。

「もちろんTOSSで推奨オーダーを提示しても、各ディーラーの仕入担当は独自にオーダーしてくることもあります。そこでTOSSでは過去3か月間、販売実績がない仕様へのオーダーをかけられると、自動的にアラートを出す仕組みも用意しています」(友山氏)。その仕様についてすでに顧客と商談が進んでいるというケースもあるので、あくまでもTOSSからは推奨にとどめ、最終的な仕入れ判断はディーラーの仕入担当が決定するというスタンスだ。

◆突然の“マイナー仕様”の受注でも半月で納車

TOSS の導入で店頭在庫の高回転化は実現するだろうが、売れ筋ではない10%の“マイナー仕様”については受注生産となってしまう。店頭販売がメインでせっかちな中国の顧客が納車待ちを嫌うことは想像に難くない。この点についても、GTMCでは受注から生産のリードタイムを圧縮することで、早期納車を実現している。

「工場では生産計画の段階で、受注生産用の枠が予め確保されています。ですので、ディーラーが当初売れ筋モデルで販売計画を立てていていても、生産段階でマイナーな仕様に変更することで直ちに生産に入ります。これによって可能な限り納車待ち期間を短縮することが可能です」(友山氏)。

広大な中国のほとんどの地域で、なんと「受注後2週間で納車」が可能だという。

◆長期在庫車をなくすことでディーラーの資金繰りも改善

TOSSは09年1月より一部ディーラーで試験運用を開始し、この4月には全ての広汽トヨタディーラーでの運用が始まった。

試験運用の結果では、TOSS導入の効果は確実に出ているという。「金融危機後の在庫整理の時期と重なるため、TOSSが全面的に在庫減少に寄与しているとは断言できませんが、90日以上60日以上といった長期在庫はほとんどなくなりました。この点についてはTOSSの効果と思われます。長期在庫の減少はディーラーの資金繰り改善にも効果を発揮するでしょう」(友山氏)。

ディーラーの仕入担当はまだ気がついていないかもしれないが、TOSSが実現したことは、単なる仕入れ推奨にとどまらない。

従来の大量生産がベースの計画生産と細かいユーザーニーズに応える受注生産を混在させ、生産調整と在庫調整を一気通貫にコントロールする役割にまで発展する。販売戦略管理システム「SLIM」、顧客情報管理システム「i-CROP」と連携しているTOSSには、まだまだポテンシャルはあるように思える。

《北島友和》

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