【全力案内!インプレ】プローブ&ケータイナビとしての着実な進化…神尾寿

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ユビークリンクの『全力案内!』は、強豪ひしめくケータイナビの世界に、“独自のプローブシステム”を武器に殴り込みをかけた個性派ナビだ。今年4月の大幅バージョンアップとリアルタイムプローブ導入以降も着実な進化を遂げており、使い勝手も向上しているという。今年夏の試乗テストから、どれだけ進化したのか。改めて試乗レポートしたい。

地図スクロール高速化で「弱点が優位性に」

前回、試乗テストをしたときに、筆者が“助手席ナビとしては今ひとつ”と感じたのが、全力案内!の地図の作りだった。同社の地図は表示される情報量が多く、街区の形状や施設名までかなり細かく描き込まれている。しかし、その一方で「ドライブ向けに簡略化・最適化した道路地図」ではなかったため、地図スクロールや見やすさの点で、ライバルとなる他社製の携帯助手席ナビよりも、感覚的に使いにくい点があったのも事実だった。

この地図の部分において、全力案内!は今年10月のバージョンアップで大幅に改善を図った。地図の情報量の多さは変えず、地図スクロールや拡大・縮小の高速化を図ったのだ。この効果は大きく、助手席ナビとしての使い勝手は大幅に改善されていた。

全力案内!の地図では、建物が多く道路が入り組んだ都市部では、他の助手席ナビよりも拡大・縮小を使う頻度が多い。以前のバージョンでは、この地図操作が“モッサリ”としていて体感的な心地よさを損なっていたのだが、地図描画の高速化によりこの不満が解消。情報量の多い地図でも、拡大・縮小や地図スクロールを使って周囲の状況をサクサクと確認できる。地図がすばやく扱えるようになったことで、「携帯助手席ナビとしては情報量の多い地図」が、弱点ではなく優位性に転じた印象である。

また、この地図スクロールの高速化にあわせて、この半年で携帯電話側の「液晶の大型化」が進んだことも、全力案内!にとって有利に働いている。現在、携帯電話の最新主力モデルでは3インチ級のフルワイドVGAが主流であり、しかもシャープの「AQUOSケータイ」やパナソニックモバイルの「VIERAケータイ」のように“横向き画面”になる機種が増えている。全力案内!ではこういったモデルにも積極的に対応している。大型・高解像度ディスプレイと、地図自体の描画高速化により、全力案内!の地図とナビゲーションは、その使い勝手が半年前と比べて大きく進化している印象だ。

◆プローブ情報は着実に増加。回避機能の充実に期待

では、全力案内!の最大の魅力である「リアルタイムプローブ情報」の進化はどれほどであろうか。

筆者は今回、東銀座を出発点に中央区や千代田区、港区の都内中心部で試乗テストを行ったが、VICS対象道路以外の渋滞情報もしっかり取得・反映されており、あわせて比較テストした他社製の携帯助手席ナビやPNDと比べても、渋滞情報の充実度は段違いであった。東京をはじめとする大都市部のユーザーにとって、この渋滞情報の量はとても魅力的だ。全力案内!の利用料は月額210円と安価なため、すでに据え付け型カーナビを持っていても、「プローブ渋滞情報を確認するために全力案内!を使う」といった使い分けも考えられそうだ。

しかし、その一方で、全力案内!の渋滞情報で、やや不満に感じたのが「せっかくのリアルタイムプローブ情報が、渋滞回避に効果的に活用されていない」点である。

繰り返しになるが、渋滞情報の「量」においては、都内では不満のないレベルまで集まってきている。しかし、その渋滞情報を鑑みて、“渋滞を回避する”ところでは、ホンダの「インターナビ」など自動車メーカー大手のテレマティクスほど、積極的かつ上手ではない。

この差は過去に蓄積した渋滞情報量の差ももちろんあるが、それ以上に大きいのは、カーナビ本来のナビゲーション性能による部分が大きいだろう。

例えば、ホンダの「インターナビ」を試すと、フローティングカー(プローブカー)情報をもとに、実にきめ細かく、かつ的確に渋滞路を回避していく。特にインターナビでは車線別のフローティング情報まで収集しているので、その回避性能は高い。

一方、全力案内!のリアルタイムプローブでは、渋滞が発生している道路の回避が、それほどきめ細かくない。特に裏道や併走路、渋滞が発生してない車線などを使って細かく渋滞回避するのは消極的であり、結果として、銀座や大手町周辺では「渋滞発生エリアを大きく避けるように大回りさせられる」というコースを取らされた。

全力案内!のリアルタイムプローブの情報量そのものは不満がないレベルであり、単体の携帯助手席ナビとして見れば、測位精度は十分に実用的だ。だが、リアルタイムプローブによる“詳細な渋滞情報の活用”という点では、さらに一歩踏み込み、携帯助手席ナビが苦手とする「細街路も含む、きめ細かな渋滞回避ルートへの誘導」にチャレンジしてほしいと感じたのは、偽らざるところである。むろん、これを実現するには、据え付け型カーナビに比肩するだけの測位精度と、より高性能な渋滞回避ルートの計算が必要になる。

全力案内!はリアルタイムプローブ情報の蓄積は急ピッチで進んでいるだけに、今後はそれを活用した「巧みな回避ルートの提案と、高精度なルート案内の実現」にも期待したいところだ。

◆理系ナビは変わらず。イージーモードがほしい

サービス全体のユーザーインターフェイス(UI)に向けると、設定項目が多く、理路整然としたメニュー体系を持つ全力案内!の特長に、大きな変化はない。メニューの構成は合理的であるが、直感的な操作や曖昧さをあまり受け付けないUIであるため、人によっては"使いにくい"と感じるだろう。前回のテストで、筆者は「理系のナビ」という印象を受けたが、その特性は変わらず残っていた。

むろん、この合理的で、細かく設定ができるUIを好ましく思うユーザーがいることは確かだろう。だが、助手席ナビを使うユーザーは、携帯電話やITサービスに詳しくないパートナーであるケースも多い。そう考えると、もっと操作や表現が簡単で、老若男女が誰でも直感的に使える「イージーモード」を用意してほしいと感じた。

総じて見れば、「全力案内!」は今年、最も大きく進化し、機能・性能向上を果たした携帯助手席ナビといって差し支えないだろう。この分野は競争が激しいが、その中で、他社よりも速いペースで着実な進化をしていることは高く評価できる。このフットワークのよさを来年も維持できるか。さらにカーナビ本来の機能・性能だけでなく、万人向けの使いやすさを実現できるのか。

全力案内!の今後を、期待を持って見守りたい。

《神尾寿》

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