日本初の通信型対応PNDとして登場した2代目エアーナビ。日本におけるPNDのブームに火を付けた存在として、注目されたこの新製品・新サービスは今後、どのように展開されていくのか。開発リーダーを務めた宮澤辰之氏に聞いた。
----:2代目エアーナビ(AVIC-T10)の発売から、5か月が経ちました。
宮澤:エアーナビはどうしても6月に投入したくて無理をしてしまった部分がありました。通信サービスの遅れなどで、当初はお客様から厳しいお叱りを受けました。数度のバージョンアップによる反応速度などの機能改善を図り、エアーナビをリリースしてからプログラムのアップデートは大きなもので5回実施しました。また、細かい修正はモジュールでの通信をおこなったときに差分で書き換えたりもしています。通信サービスの遅れについては、8月20日までに申し込んでいただいた方に対して、9月と10月の通信料金を無料とさせていただきました。
----:ネットの書き込みを見ていても、PNDといえどもカロッツェリアというトップブランドゆえにユーザーの期待が非常に高いと感じました。9月のサービス開始以降、通信モジュール使われているかたの平均利用金額は、およそどれくらいなのでしょう。
宮澤:9月は開始月ということで皆さんたくさん使われたと思います。10月と11月のそれぞれの利用結果を待っている状態で正確ではあrませんが、平均で 1500円程度だと思います。クルマの利用が少ない方にとってのミニマム1029円は高いという声があります。全く使わなくてもこの金額が発生してしまいますから…。なんとかしたい部分です。
----:ナビポータルの人気コンテンツは?
宮澤:やはりいちばんはスマートループ渋滞情報ですね。VICSを補完するプローブ情報は地図上に破線で表示されるのですが、その破線が出ているということは、カロッツェリアのナビユーザーが通っていることの証拠です。“同じスマートループ対応ナビを使っている者同士”という共有意識というか、コミュニケーション意識を抱いてお使いいただいているユーザーもいらっしゃるようです。
----:そのスマートループに関しては、夏に大きな発表がありました。ホンダ・インターナビとのリアルタイムプローブ情報の相互利用が始まりますね。
宮澤:相互共有が12月20日から開始されることが決まりました。もちろんエアーナビでもその恩恵を受けられ、データ量が一気に増えるはずです。蓄積型プローブが各社出そろったところでのインターナビのユーザーとスマートループのユーザー同士でのリアルタイムプローブ情報の共有は、交通情報コンテンツを新たなステージに押し上げる可能性があると感じています。スマートループがどのように進化するのか私も非常に楽しみです。
----:ソフトバンクとの協業によるナビポータルはいかがでしょうか。スマートループやガススタ検索などパイオニアがサービスするコンテンツとナビポータルがサービスするコンテンツの違いは何でしょうか。
宮澤:ナビポータルのコンテンツは、ヤフーグルメなどの口コミを利用してカーナビが持つ位置情報に対して“近い/遠い”以上の重み付けができるのが特徴です。ナビポータルはソブトバンクさんと組んでいますが、ソフトバンク回線、パイオニアカーナビのみが利用できるサービスではありません。例えばドコモの回線を使ったパナソニックの製品でも利用できるスキームだと両者が同意しています。カーナビの通信サービスが普及する中でのサービスプロバイダの性質です。一方でパイオニアが提供するサービスはパイオニア製品の価値向上を目的としています。
----:リーズナブルな価格やクオリティの高い筐体などを評価して、スタンドアローンのPNDとして買われた方も大勢いると思われますが。そういった方の評価はいかがでしょうか。
宮澤:カーナビとしての基本機能、自車位置精度や誘導・案内という部分では高い評価をいただいています。GPSだけでなく、加速度センサーやジャイロを内蔵し、車速パルス接続もオプションで用意していますので、カロッツェリアを名乗るからにはそれに負けない精度とルート品質を目指しました。
----:2代目エアーナビは、その登場によって国内のPNDの盛り上がりに火を付けた存在です。
宮澤:家電量販ではソニーさんが強く、通販では三洋電機さんが強い。われわれはカー用品店で強みを発揮して、それぞれで市場を分け合っている状況です。ただし、カー用品店は行く人・行かない人が分かれますし、女性ユーザーの取り込みという点では弱いのですね。それを打開するために新たな販売方法が始まります。
----:ただ安いカーナビとしてのPNDの範疇を超えた、エアーナビを核とした様々なコラボレーションが展開されていきそうですね。市販カーナビNo.1の殻から脱皮しようとしているパイオニアの姿を見るような気がいたします。本日はありがとうございました。
《聞き手:三浦和也》