JFEスチールは、鉄系焼結材を切削加工する際の工具磨耗を大幅に低減する添加材「JFM4」を開発した。
鉄系焼結材は鉄粉末を焼き固めた材料であるため、材料内部に多数の細かい気孔が分散した構造が特徴。気孔は熱を伝えにくいため、材料と切削工具の摩擦で発生する摩擦熱が放散されず、鋼板や鋳造・鍛造で製造された鉄系材料を切削する場合に比べて工具が酸化しやすく、磨耗が激しくなる。
鉄系焼結材を使った機械部品の製造コスト低減を実現する上で、切削加工費の低減が重要な課題となっている。
今回開発したJFM4は、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)を主成分とした複数の酸化物からなるミクロンサイズの粉末で、低融点の成分を含むのが特徴。
切削加工時、工具は高速で回転しながら焼結材表面と接触するため、摩擦熱が発生する。焼結材製造過程で添加された、少量のJFM4粉末は、この摩擦熱によって一部の低融点相が融解し、工具表面に付着する。更に工具の回転とともに工具表面に拡がり、JFM4の被膜を形成する。
この被膜は潤滑膜として機能し、工具と焼結材の摩擦を下げ、接触面での工具の磨耗を抑える。また、微細なJFM4が分散した切屑は、微細化が進み、加工面から容易に排除されるため、滑らかな加工面となる。
JFM4の添加による焼結材自体の強度低下もなく、焼結材を切削加工した切削工具の磨耗量は、無添加材切削時の約4分の1となり、切削工具費の大幅な低減が可能となった。
同社では、この開発技術の一層の普及を進めるとともに、更なる研究開発を通じ、鉄系焼結材を使った機械部品の製造コスト削減と鉄系焼結機械部品の品質向上を図っていく方針だ。